終わりの始まり
学校なんて、行きたくなかった。
でも行かなくちゃ。ちゃんと卒業するんだ。
髪の毛にスプレーをぶっ掛けて、眼鏡を付けて、ネクタイを結ぶ。これらが無ければ、皆何も言わなくなるんだろうか。でも、昨日言われたことを思い返せば、多くが「庶民」とか、中身に関することばかりだ。髪色やビン底眼鏡なんて、あってもなくても俺の評価は変わらないだろう。
理解不能な授業も意地で受けた。
当てられないで済んだのはラッキー……だったかもしれない。これ以上自分の無知を晒すのは嫌だった。
なるべく理解しようと、言われたことは全部ノートに書く。分からなくても授業にはついて行く。
そうこうしているうちに、何とか午前中の四コマは終わった。
学食に行こうと席を立つと、「昨日は散々だったな」と後ろから肩を叩かれた。
「……え?」
驚いて振り向くと、今まで話したこともないやつが「学食で見てた」と笑って言う。
昨日のことか。思い出して、俺は少しだけブルーになる。
「あいつ……矢嶋 祐希っていうんだけど、去年のSクラス編成査定落ちたんだよ。必然的に特待生試験も受けれないし、お前に嫉妬してるみたい」
あんま気にするなよ、と言って笑ったそいつは、俺の前の席のやつと一緒に教室を出て行った。
学園に来て初めて普通に話し掛けられて嬉しかった。けれど、そんな真剣なやつを差し置いて特待生になってる自分に、罪悪感を感じた。嫉妬するくらい特待生になりたかったやつまでいるのに、俺はのうのうと「特待生」やってるだなんて。
食欲ないな。
でも何か食べなくちゃ。
券売機の前で悩んでいたら、俺の後ろにだけ列が出来ていた。すぐ後ろにいる先輩が迷惑そうに俺を見ていて、「すいません」と脇に避けた。
「あれ」
そのとき、ふと見た場所に、特待生の木崎が座っていた。
その向かい側に、ヘッドフォンを付けた人がいる。初日に寮で見た人だ。木崎の知り合いだったのか……寮の中で仲良くなったのかな。
周りは「上ノ宮だ」とか「珍しいな」とか話しているけど、二人は聞こえないのか、気にせず飯を食ってる。木崎が食ってるやつ、美味そうだな。同じのにしようかな。
じっと見ていたら、突然ヘッドフォン先輩が席から立って、木崎を連れて行ってしまった。
……何か、連行されてるっぽかったけど、あれは仲良いのだろうか。
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