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休暇前
 
 
 「夏休み。俺んとこ来いよ」
 「………はぁ?」


 それは突然だった。


 ◆


 その日は休暇前最後の部活動総会に参加していた。
 内容は主に、各部活の予算報告や活動報告。こういう会議では、普段はお菓子ばっか食ってる近江先輩が意外とまともだったりする。ちなみに大倉先輩は弓道部主将だから、部活生徒としての参加だ。

 会議が終わった後、各部活の部長さんたちが「生徒会慣れたか?」とか「頑張れよー」とか声を掛けてくれるのが嬉しくて、俺も真面目に頑張ろう!なんて思ったりもしたけれど、もうすぐ夏休み。ということで、頑張るのは夏休みが明けてからでもいいよな、多分。


 「ただいまぁー!」


 近江先輩が生徒会室のドアを勢いよく開けると、紫先輩がテーブルの食器を片付けていた。


 「ユカリンお客様?」
 「丁度入れ違いだったね。木崎君と桜庭が来ていたよ」
 「えっ!」


 その二人なら会いたかったと、俺は肩を落とした。タイミング的に、本当に入れ違いだったようだ。
 近江先輩は「僕もアイス食べたいなぁ」と紫先輩にねだりに行った。俺はソファに座ろうとしたけど、司が腕を組んで何か考え込んでいるから、近寄りたくない。巻き込まれたくない。


 「晶」


 仕方ないから紫先輩の手伝いでもしよう、とキッチンに行こうとしたら、司が俺の名前を呼んだ。


 「……何だよ急に」
 「夏休み。俺んとこ来いよ」
 「はぁ?」


 そして、話は冒頭に戻る。


 「………何だよその顔」


 よっぽど嫌そうな顔をしてたのか、司は眉間に皺を寄せた。正直、それはこっちのセリフだ。ちょっと何言ってるか分からないです、と言ってやりたい。


 「別に? つーか無理。行かない」
 「は? 俺様のお誘いを断るなんていい度胸だな」
 「何様だよ。バイトするかもしんないから。無理」


 もしくは、寮に引きこもる。司の家なんかに行ってわざわざ交通費を使いたくないし、何をされるか分からない超アウェー状態なんて避けたい。


 「………あーくそっ、だから俺様のとこで雇ってやるっつってんだよ貧乏人が」
 「…………はぁ?」


 突然の物言いにきょとんとしてたら、苦笑いした紫先輩が間に入ってくれた。


 「司、その言い方は……」
 「貧乏で悪かったな、馬鹿」
 「………だから、貧乏人は大人しく働いてろっつってんだよバーカ」
 「何だとてめぇこらっ!!」


 いきなりそんなことを言われて、黙っていられるはずがない。この場合完全悪であるはずの司は、「チッ」と舌打ちをして生徒会室を出て行った。
 くそ、貧乏で悪かったな。おはじき舐めて空腹を紛らわす人間の気持ちが、お前に分かるのか。一生「火垂るの墓」観るなよお前。




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あきゅろす。
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