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授業

 
 入学式の次の日から、早速授業が始まった。
 この学校は、中等部からすでに高校生レベルの勉強をしてるらしく、初日からかなり難しい。


 「 y=(1-sinx/x)^2/3, z=1-sinx/xとすると、y=z^2/3,dy/dx=(dy/dz)(dz/dx)……」


 ホスト鳴海は数学教師だった。
 見た目はホストのくせに、黒板にすらすら数式を書いていく。
 え、何で英語の授業じゃないのにxとかyとか出てくんの?
 もしかして分からないのは俺だけじゃないんじゃないか、と教室を見渡してみても、皆黒板に集中し、片手間にノートを取っている。理解していないのは俺だけのようだった。


 「dy/dxの正負はsinx-xcosxに一致するから、この式の正負を考える。x=pi/2,3pi/2を代入して1,-1になることから分かる通り――…」


 だから分かりません。


 ◆


 二時限目は古文。


 「母君いませし世には幸和まだ三つばかりにてい愛しきものにしたまひしを、此の年頃公に出でつかうまつり――…」


 教科書を目で追って、ようやく先生の話を聞き取れるレベル。さすがの俺も日本語くらいは読める。数学よりはまだ出来そうだと、安心していたのも束の間。


 「この文を現代文に訳して貰います」


 えっ、解説なし?


 ◆


 三時限目は礼儀作法、茶道の授業。

 中央校舎の真ん中が吹き抜けになっていて、そこに小さい和風な庭と茶室がある。ここにも鯉が、小さい池の中に泳いでいた。理事長、鯉好きなんだろうか。


 「茶湯者と申すは、手前よく茶点てて料理よくして、いかにも塩梅よく茶湯座敷にて振舞する人を申す――…」


 茶道の先生は外部講師の女の人だった。基本的にジョウキン(常に学校にいる先生のこと。らしい)の先生は男ばかりなんだけど、外部講師の先生はたまに女の人も来るという。

 初日はお茶の味を知る、とかで、色んなお茶を飲んだ。
 数学や古文よりは、初心者にも優しくて安心だ。


 「あらまぁ……」


 特待生眼鏡君こと木崎は、完璧なお手前とやらで茶道の先生を驚かせていた。
 さっきの数学でも古文でも、木崎は凄かった。鳴海のミスには気付くし、古文は「独自の解釈ですが、そういう考え方も出来ますね」と先生に褒められていた。


 「あなた、もしかして……」
 「京では渡辺先生のご実家にお世話になってます」
 「あらあら……ふふ、恭子はんもおちゃめな方やなぁ」


 何やら話し込んでる二人を見ていたら、舌をヤケドした。


 「熱っ!」


 そんな俺を見て、チワワ軍団がクスクス笑う。
 ムカついたから、全部飲み干してやった。




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