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堀田先輩








男子達が桜木に近づくのを見た私はそろっと洋平のそばに歩み寄った。
すると堀田先輩と目が合った。ひぃ、面倒事は嫌いなんだよぉぉ!


「君、名前は?」


堀田先輩がさっきとは比べものにならないくらい優しい声で私に話し掛けてきた。
しかし私にはそんな声の質の変わりように気がつく余裕はない。
ななな名前聞かれるって目ぇ付けられた!?でも残念ながら私に不良を無視するような勇気はなかった。


「佐伯千尋ですっ」


私はサッと答え、洋平の後ろに隠れた。洋平が頭だけ回して私を見た。
うぅ、堀田先輩まだ私のこと見てるぅぅぅ!!


「み、水戸と付き合ってるのか?それとも桜木と?」


は、はい?
思わず目が丸くなる。この人何言ってんの?
洋平はおもいっきり堀田先輩に振り向いた。顔は見えないけど私と同じような顔をしているだろう。


「な、何バカ言ってんですか?」


………しまった。バカとか言ってしまった。あああリンチとかされたらどうしようーーー!!


「よかろう水戸おまえがその桜木(バカ)を連れてきな 二人まとめて相手してやるよ」

「ふんぬーーー!!!桜木と書いてバカと読みやがったな もーー怒った!!!」

「落ち着いて」「桜木君!!」


頭を抱える私をスルーして、堀田先輩は洋平に声をかけた。桜木はそれに反応した。
え、なんでスルーしたの?


「頭数をそろえといた方がいいっスよ ザコばっかりじゃしょーがねーけど」


「じゃあね、千尋ちゃん」


堀田先輩が私に手を振ってきた。
じゃあ『ね』!?千尋『ちゃん』!?堀田先輩ってどういうキャラ!?


「は、はぁ……さようなら」


そう言うと堀田先輩は満足げに教室から出て行った。


「一体なんなの…?」


ぽつり、と言葉を零すと洋平が振り向いた。
ん?と洋平を見るとため息をつかれた。


「え!?なんでため息!?」

ゴンッ ゴンッ


私が洋平に抗議の言葉を送るのと同時に桜木のいる方から鈍い音がした。頭突きの音、だ。


「やべーな。ああなった花道はオレも止められねぇぞ」


情けないことを言う洋平に今度は私がため息をついた。


「なっさけないなぁ。しょうがない、止めるか」

「なっ、やめとけ!」


洋平が私が行こうとするのを止める。しかし私は大丈夫、とだけ言って桜木に近づいた。


「桜木、落ち着きな」

「ふんぬーーーッ!!」

「はぁ、やっぱ聞こえてないか」


今度は桜木に対してため息をつく。そして軽く深呼吸をした。

久しぶりだし、それに桜木でかいけどできるかな……?


「桜木!!」


不安を残しつつもでかい声で桜木を呼ぶ。
それに反応して桜木は私に(頭突きをくらわせようとしているのか)つかみ掛かって来る。
その手をいなしてかわし腕を掴む。そのまま足をはらって………


ドシン!!

背負い投げを、した。



「え、えぇ!?」


洋平が私と桜木を交互に見ながら驚きの声を上げる。桜木も上半身を上げて私をガン見。
当たり前だ。こんなか弱そうな女の子がこんなでかい男を投げ飛ばしたら。
もちろん洋平以外の人達(先生含め)も私を見て息を飲んでいる。


「どうなってる…?」


まだ状況をうまく掴めていない洋平が私をじっと見ながら言った。
それを見た私は罰が悪そうに頭を掻く。


「いや…あの、柔道を少しかじってて…」


周りの人達が少しってレベルじゃねーだろ!!等と思っているだなんて知らない私は桜木に手を差し伸べた。


「ほら。もう投げられんのが嫌だったら関係ない人がいる中で暴れないでよ?」

「お…おう」


頭にハテナを飛ばしながら桜木が私の手を取って立ち上がった。



私はこの時、ものすごく面倒臭い人に見られていただなんて知らなかった。










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