バスケットボール
ハルコちゃんの視線が私から桜木に移った。当初の目的を思い出したようだ。
「桜木君!!」
「ははははい!!」
ぷぷっ、どもってやんの。桜木って見かけによらず本当に純粋だよなぁ。でも桜木のそういうところが好きだな。
「頭の傷はどうですか?バックボードにぶつけた時の…」
「ハ、ハルコさん!!もう大丈夫!」
ハルコちゃんが心配そうに桜木を見て言う。桜木は相変わらずどもったまんま。
…ん?バックボード?それってバスケのゴールの?それともただの後ろの板?……自分で言っといてなんだけどなんだそりゃ。
もんもんと考えていると洋平が茶化しに入った。
「ハルコちゃんバックボードの心配した方がいいぜこいつ異様に頭がカタいから」
「あはははそうなんですか」
笑っている洋平にハルコちゃん。桜木がジトーッと洋平を見ている。
「桜木君バスケ部に入部届け出しときましたから お兄ちゃんが根性ないヤツはお断りだって言ってたけど桜木君なら大丈夫ですよね!!」
私はハルコちゃんの言葉にど肝を抜かれた。
さ、桜木がバスケ部…?いや、確かに桜木は背も高いし運動神経も並外れて良さそうだからその分にはぴったりだと思うけど………桜木にはスポーツなんて似合わない。
「コンジョーあります!!大丈夫!!」
「なに花道おまえバスケ部に入んの?」
やる気満々に言う桜木に、私と同じようなことを思っただろう洋平。
ハルコちゃんは私をじっと見た。
「千尋ちゃんはなんで湘北に…?女バスないのに…」
「え?ああ、怪我とかで色々あってね。」
怪我、という言葉におもいっきり顔を歪ませたハルコちゃんに手をブンブンと振る。
「もうほとんど治ったから大丈夫だよ!もう少しでリハビリが終わってバスケできるようになるし!」
「じゃあ尚更なんで湘北に…?」
「ははは、浅ーい理由があるのですよ」
「え!?浅いの!?」
うん。こういう時って普通に「深い理由」だよね。でも私は「浅い理由」。
「それに私男バスのマネージャーやるつもりだし」
「本当に!?あっチャイムだ、それじゃ!」
私の言葉に嬉しそうな顔をしたが、突然鳴ったチャイムに弾けるようにしてハルコちゃんが教室から出て行った。
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