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青田先輩








何か桜木が超絶機嫌悪い。
どうやらハルコちゃんに片思いの相手がいたらしい。たしか名前は…ルカワ?
殺気っぽいものをバンバン放っている桜木には誰も近寄れない。否、近寄りたくない。


「じゃ、行くか花道」

「おう」


急に桜木と洋平が立ち上がった。
私は不審に思って首を傾げる。


「どーしたの?」

「あー…堀田先輩に呼び出されててな」

「入学早々ご愁傷様」


手をひらひらと上げて言うと洋平に気持ちこもってねぇな、と言われた。こめてないもん。
二人が教室から出ていくと廊下が急にうるさくなった。エクセトラ達と合流したんだろうな。

ふ、と窓の外に視線をやると他棟の屋上に人の影。
あれが堀田先輩たちかな、とじっと見ると明らかに仲間ではないであろう人がいた。1対多数で喧嘩を始める。時間からして桜木達ではない。
嫌な、予感。
すぐさま席を立って教室を出た。

ー…が。


「1年10組の佐伯千尋か?」


ごつくてでかい人が私の前に立ちはだかった。おそらく三年だ。
ってかなんで私の名前知ってるんだろう。目立ったことはしていないはずだけどな…。


「あー…はいそうです。何か用ですか?今急いでるんですが」


おもいっきり面倒臭い顔をその人に向けると何故か笑みが返ってきた。
嗚呼、この人本当に面倒臭いタイプの人種だ。


「俺は青木龍彦、柔道部主将だ。君の背負い投げは見た。もちろん柔道部に入るんだろう?」

「いいえ、入りません」


サラッと切り捨ててその場を後にしようとしたが、この男は良くも悪くも(大体が悪く)しつこかった。
横を通り過ぎようとすると腕を捕まれた。


「なぜだ!!なぜその力を持っていて柔道部に入らない!?」

「柔道は遊びでやってるんで」

「柔道部に入れ佐伯!!」


いや話聞こうよ、とため息をつくが生憎青田先輩とやらにはそんなもの効かないようで。


「私他の部活に入るんで柔道部には…」

「では勝負だ佐伯!!」


なぜだ。一体どこからそんな話になった。とりあえず話に脈絡をつけていただきたい。


「柔道で勝負だ!!俺が勝ったら佐伯は柔道部に入る!それでどうだ?」


それ、ほぼ強制じゃん。
…まあいいか。勝てばいいんだし。この人がいくら強かろうが。


「あー…はい、わかりました」


「よし、場所と日時は追って連絡する。逃げるなよ佐伯!!」


ハッハッハッと笑いながら青田先輩は私から離れて行った。
…嵐のような人だ。









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