MVP
「おい」
「ん?」
もんもんと考えていると流川クンから声をかけられた。
流川クンをじっと見るとハルコちゃんが惚れた理由がわかった。こいつ……顔はいい。無愛想だけど顔はいい。
「お前の名前聞いたことあんだけど。なんで?」
「…は?」
いや、知らねーよ。こっちが知りたいわ。なんで知ってんの?
………あ。
「流川クンはバスケ好き?」
「………」
無言の後、流川クンは頷いた。好きって表現が恥ずかしかったか。
「私中学生のときはバスケで…自分で言うのもアレだけど…有名だったんだよね。それでだと思う」
「…二年連続MVP?」
「………そー」
こんなにすぐわかるものか。この野郎。
ハルコちゃんは私見てすぐわかったみたいだったけど。女子だからか。
「なんで湘北に来た?」
「ケガ。今はリハビリ中だけど」
「治ればやれんだろ?」
「うん。部活ではやれないけど他のところで続けるから」
ハルコちゃんよりグサグサッと聞いてくる。湘北に来た理由を説明すんのは面倒臭いからサラッと流す。
「1on1やれ」
命令形かよ。……いやそれよりも。わけがわからない。いや、青田先輩に比べりゃわかるけどさ。強い人とバスケがしたいぜ!っていう漫画みたいなかんじでしょ。
「治ったらね。…流川クンはバスケ部入るでしょ?私マネージャーなる予定だからよろしく」
肯定するのにに流川クンが頷いた。
それと同時に包帯が巻き終わる。
「終わったよ。病院行かなくても平気だと思うけど…包帯は巻き変えなよ。じゃ、私は行くから。またね、流川クン」
流川クンが立ち上がろうとするのを見て、私は保健室をでようとしたが佐伯、と呼ばれ振り返る。
「クン付けするな。キモチワルイ」
キモチワルイってなんだ、キモチワルイって。大体そこはありがとうって言うところでしょうが。
まあそこまで流川クン…いや、流川に要求するのもアレだな。
またね、流川と言って保健室をあとにした。
1on1をやるという面倒臭い約束をまた作って。
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