賭け
桜木がものすごくはしゃいでいるのを見届け、私はもう一面の方へ行った。
床にマットが敷いてある。柔道場は今日使えないらしい。理由は聞いたけど忘れた。どうでもいい理由だったんだろう。
「あのー…青田先輩は?」
マットを敷いていた人(おそらく柔道部)に青田先輩はどこにいるのか聞いた。自分から言ってきたくせに先に着いていないとは何事か。
「そのうちくるだろう」
マットを敷いていて柔道部でごっつい人…長いな。マットさんでいいや。マットさんがぶっきらぼうに答えた。
「人多いなぁ。こんな中でやるなんてごめんだ」
ぽつりと言葉を零して上を仰ぎ見るとギャラリーにはまだ沢山の人。桜木とゴリラ…間違えたハルコちゃんのお兄さんだから赤木先輩か、の勝負は終わったんだからみんな帰ろよな。
そう思っていると、帰ろうとしていた流川と目が合った。ここに来てるってことは桜木のこと気になってんじゃん。そんなことを考えてふにゃりと笑いかけた。しかし流川はスルーしてスタスタと歩いて行きやがった。こんにゃろう。
(なんでアイツ柔道着きてんだ?)
む、と流川の後ろ姿を睨んでいると側にドタドタと歩いてくる音が聞こえ、振り向く。
「千尋!!来てたのか!この天才桜木のダンクを見たか?」
「おー見た見た」
自分のことを天才って言わなきゃかっこいいのにな。
そう思っていると桜木は私の服装に気がついたようで。
「ぬ?千尋、なんだ?そのカッコは」
「んー…賭け、みたいなもんかな」
勝ったら入部しない、負けたら入部する。うん、賭けだよねコレ。
桜木の後ろを見ると赤木先輩とハルコちゃんはもういなかった(桜木軍団はいるけど)。
バンッ
「ハハハハハ!来たか佐伯!!」
「ぬ?」
「先輩、貴方から言ってきたんだから待たせないでくださいよ」
ドアを豪快に開けて入ってきた青田先輩に肩を竦める。この人って、ほんとめんどくさい。
「なんだ?コイツ」
桜木が青田先輩におもいっきりガンをつけた。どーどー、と落ち着かせる私。
「賭けの相手だよ、桜木」
「何の賭けなんだ?」
「負けたら柔道部に入る」
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