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駄作
●もうその手は繋げない (兄神)


最近はアイツの泣く夢は見なくなった。まぁその方が目覚めはイイんだけど、その分なぜか不安が押し寄せてくる。あれ、可笑しいな?そんなことを思うときがあったり、なかったり。そして久しぶりに見た夢。
やっぱりアイツは変わらずに幼い姿で不安そうな瞳で俺を見て、そして泣く。あぁもう、ホントにどうしてほしいんだろ。この数年で戦うこと以外は忘れてしまった。

『に、ちゃ…ぅ、にぃちゃ…ひっく』

ただ今日はちょっと違った。いつもなら泣いて泣いて、下を向いているアイツが今日は顔を上げて俺に必死に手を伸ばしてくる。今にも届きそうだけど届かない距離…バカなやつ。そう思ったけどなぜか分からないけどその必死に伸ばされた手を取ろうとする俺自身もバカだ。関わらなきゃいいのにネ。でもまた目覚めが悪いのは嫌なんだよ。

「…一体お前は何がしたいんだろうね?」

小さく呟いた言葉はきっと相手には聞こえていないはず。むしろ聞こえない方がいい。小さな手を必死に伸ばして、俺に駆け寄ってくる姿は本当に小さな頃を思い出す。距離感が掴めないのはきっと周りが真っ暗だから。けれど、確実にアイツは近付いてきてると思う。だから俺もこの場所から動かない。ゆっくりした動作で地面に膝をついてアイツを待つ。小さい頃はよくこうしてたっけ?ちょっとだけ思い出したヨ。

『にー、ちゃんっ!!!』

泣きながらそれでも必死に俺の元にきたアイツは最後の最後でアイツらしく、タックルをかましてきた。いつもの俺なら即殺しちゃうぞ。でも今日はそんな気分じゃなくて、逆にくすぐったい気分だ。どこからそんなに涙が出てくるのだろうか。わーわー、耳元で泣かれるのはちょっと煩いけど今はあんまり気にならない。ぎゅっと小さな手を俺の首に回してくる。お互い密着して、アイツの子供ながらの高い体温を感じる。あれ?これって夢じゃないっけ?このごろの夢ってリアル感あるんだネ。でも俺らしくもないけど、いいかって思ってしまう。背中を擦ってやれば次第に嗚咽は収まってきた。

『ひっく…ぅ、う……』

「…泣き虫だネ、神楽は。ちょっとは強くなったと思ったのに」

そう言って軽くポンポンと頭を叩けばさらにぎゅっとしがみついてきた。それでも俺はそれ以上の事はしなかった。

もうその手は繋げない

(久しぶりに呼んだ妹の名前に思いを込めて)



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