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『兄ちゃん』

ほら、また聞こえてくるアイツの声。いつからだろうか、あぁ、アイツと会った日から何日…か経ってからかな？時々、夢に出てくるアイツ。しかもその姿はあの日あの時、俺が家族を捨てた日の幼い頃の姿。

何が目的でお前は俺の夢に出てくるんだ。そんなに俺の邪魔をしたいのか。あぁそういえば根性を叩き直してやるとか何とか言ってた気もするけど…俺はアイツにとってまだ家族なのだろうか？馬鹿兄貴とか言ってたっけ？今度会ったらまた蹴りいれてこようか。なんだかんだ言って俺もまだ家族と思ってるんだろうか。ならアイツは俺に何を求めてる？

『兄ちゃん』

幼い声が頭に直に響く。じっと見つめてくる瞳はまっすぐに俺を見ている。その瞳には寂しさが見え隠れ。あぁ寂しいのか…でも俺は寂しさを紛らわす方法なんて知らないよ。俺が知ってるのは戦い方だけ、だ。だから俺は何もしない、何もできないまま立ってアイツを見ていることしかできない。

『兄ちゃん、兄ちゃん』

次第に声に嗚咽が混じってくる。今にも泣き出しそうな表情で見つめてくる。不細工な顔と、思いつつもそれを声に出さないのはちょっとした気紛れな優しさなのかもしれない。俺にもまだこんな感情があったんだなってちょっと実感。

『ぅ…ひっく、にぃ、ちゃ…うぅ』

あーあ、泣き出しちゃった。それでも俺を呼ぶ声は変わらない。何、そんなに必死になって俺を呼ぶ？俺はお前にとって酷い兄貴なんだろ？もう分かんないことだらけだ。早く泣き止んでよ、泣き顔なんか見たくないんだからさ。このときの胸の奥の痛みなんか知らないふり。

泣き止むことを知らないのか、それとも涙が止むことがないのか。どちらにせよアイツは泣き止まず今だに嗚咽混じりに俺を呼んでくる。涙と鼻水で濡れた顔は見れたもんじゃないけど、それでも必死に呼びかけてくるアイツから目が離せなかった。

何度も何度もその夢を見る。お前は俺に何を望んでいるのか。きっと俺はお前の答えには答えられない。ただ、その夢を見た後の目覚めは最悪って事だけは言える。

願わない夜はないよ

いつも夢を見る度にお前が泣き止んでることを願うよ。


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ちょっとしたシリーズです。
突発的／^^＼