7色の瞳が集うまで
「僕は月守人故僕なんでしょーし、文句を言ったって途中でやめれません。だったら、楽しんだ方がお得です。――と、僕は思います〜」
カガリは見ている者が暖かくなるような笑顔でそう言った。
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「…そっ、そうだよねっ!」
うん、そうだよ。
「私が巫女だってゆーならやってやろーじゃない!!失敗するって決まってる訳じゃないし!」
私は両拳を握りしめる。気が付くと、さっきまで冷えていた手足が嘘のように暖かくなっていた。
「せっかくこんなとこ来たんだもん!貴重な体験さっ!」
こんな時こそポジティブシンキングってやつさ。
「………いや、まぁ、でっかい猿とか犬とかは泣いちゃう位キツかったんだけど…。…死ぬかと思ったし」
あああ思い出したくもない思い出が出てくる出てくる。
でも、無事で良かったです〜。と、言ってくれるカガリくん…癒される。凄く癒されるよ。
「ありがとう!カガリくんっ」
私は一度深呼吸をし、満面の笑みで感謝を示した。その一言にたくさんの意味を込めて。
「?どういたしましてです〜」
意味は分かってなかったみたいだけど、暖かな笑顔でそう答えてくれるのが嬉しい。
その後、石造りの部屋の内側に厚い氷が張ってある氷冷庫に案内され、甘くて美味しい木の実を二人で食べた。
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「――と、言うわけでですね。私、頑張って巫女やらせて頂きます!」
広間に帰るなり正座をし、やる気満々でそう告げた私に、じゃれていたヤタさんとキョウさんは何が起こったのか分からず顔を見合わせた。
「よろしいのですか?とても危険な―」
「守って下さい。」
心配してくれるチシュウさんの言葉を遮り私は言葉を続ける。
「私を。」
私は決めた。
「それにこたえる以上の事は必ずします。」
辺りが静寂に包まれる。
「柚希…様」
その中で揺らぐ紫の瞳が私を見つめる。
「いーんじゃねーの?本人が言ってんだし。だったらオレらは守るだけだよなぁ?ヤタ」
「おぉ!チシュさん、俺も良いと思います」
「良いんじゃないのぉ?ねぇ」
「はい〜」
キョウさん、ヤタさん、シキさん、カガリくん。と、皆が頷いてくれる。
「………」
チシュウさんは瞼を閉じた。 「…それでは」
そう次に紫の瞳を覗かせた時には揺らぎは消えていた。
「月守人チシュウ」
凛と落ち着いた声でチシュウさんが名乗ると、ヤタさんの表情がぱぁっと明るくなりその後に力強く続く。
「!ヤタ」
そしてオレ様がやってやるよと言わんばかりに自信満々気な声。
「キョウ」
…意気揚々なのはありがたいんですが、なんでそんなに偉そうなんですか。
「カガリ」
次に聴こえたのは穏やかな、だけどしっかりとこの部屋に響く心地好い声。
順々に名乗ってたのがそこで止まる。するとシキさんが部屋の入り口に目線を送り、少し楽しそうに言った。
「いるんでしょぉ?」
…へ?
「…」
出てきたのはあの銀髪の人だった。…あの、何だか物凄く機嫌悪そうなんですが。
「…ユウヒ」
ぽつりとそう一言。この流れからすると多分、名前、だよね。
その言葉を待っていた様子でチシュウさんは言葉を紡ぐ。
「以上5名。これより主、凪音の巫女・柚希様と認め、凶風凪ぐ刻迄お側を離れずお守り致します」
そのどこまでも真摯な瞳を受け止め、私も真っ直ぐに見返す。
「はいっ、よろしくお願いします!」
絶対に巫女をやりきってちゃんと帰るんだ。大丈夫。なんとかなる!
私は拳を握りしめた。
7色の瞳が集うまで・終
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