静紫の瞳のその前で
「あのっ、この鏡!」
その言葉に何かを察したのか、キョウは広間に人を集めた。
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集まったのは、キョウさんにヤタさんにシキさん、そしてチシュウさんに、今初めてみるカガリくん。
カガリくんは単独で私を捜してくれてたらしく、たった今帰って来たみたいだった。金髪碧眼で何だか天然っぽくて可愛い子だ。私より普通に背ぇ高いけど。
銀髪の人はいなかった。
「―と、言うことがさっきあったんですけど…」
私はさっきあった出来事を集まってくれた人達に話した。
「あの…、レゼ何とかとか、イラ何とかって何ですか?話がさっぱり…」
あの事で、自分が巫女になってしまったと言うこと、そしてその巫女は何かをしなくてはいけない、と言うのは分かった。けれど他の事は全然分からなかった。
ほんとに異世界に来ちゃったんだな、私。
「それは私(わたくし)から説明いたしましょう」
そう申し出てくれたのはチシュウさんだった。
「おそらく柚希様がわからない単語はレゼプティータ、ユンウ"ェーラ、フューガ、イライエンガ、カリユガかと…」
「あ、はい、それです!」
多分。レゼ何とかとか、イラ何とかとか。
「やはりそうですか…」
そう言いながら穏やかな微笑みをうかべる。チシュウさんって、なんだか凄く安心出来る人だなぁって思う。誰かさんと違って。
「ユンウ"ェーラとはこの世界のことです」
ふむふむ、ユンウ"ェーラはこの世界…。
「フューガ、イライエンガ、カリユガはこのユンウ"ェーラのサイクルのようなもので、誕生・再生のフューガ、成長・安定のイライエンガ、そして」
チシュウさんの声が少しずつ、本当に少しずつだけど硬くなっていくのが何となくわかる。
「破滅・虚空のカリユガ」
その単語にぞくりと背筋が冷える。
「カリ…ユガ……?」
無意識に口に出していたらしい、チシュウさんが悲しそうな笑顔で私に頷いた。
「えぇ…。そして、そこで出てくるのがレゼプティータです」
レゼプティータ。
「柚希様が鏡でお会いしたのは間違いなく凰音の守(オウネのカミ)でしょう。カリユガからフューガへと再生させる歌、レゼプティータを唯一紡げる方です」
凰音の守…。
『ユズキ…』と、私を心配そうに見つめる彼女の顔が脳裏をかすめる。穏やかで神々しい、破滅した世界を再生させる歌の歌い手。
再生させる歌、レゼプティータ…鏡から流れてたあの歌が、そうなのかな…。
「おい、巫女」
「ぅえっ!?」
ついつい一人で考えて込んでしまってたら正面に座ってたキョウさんに呼ばれた。へ、何?何??
きょろきょろと周りをみると、チシュウさんがこちらを窺わし気に見つめていた。
「ここまで大丈夫でしょうか?」
「あ、はいっ。大丈夫です!」
多分。ちゃんと理解出来てる、はず…!
チシュウさんはその回答に微笑み頷き、続けた。
「そして柚希様【凪音の巫女】は荒御魂(あらみたま)を鎮めるのがお役目です」
「………へ?」
あらみたま?
「私…が?どうやってですか?」
その瞬間辺りが凍りついた、…ような気がした。あれ、聞いちゃまずかったですか?
……き、気まずい空気が。
「あのねぇ、柚希殿。チシュウ達もよく知らないんだよ」
その場を溶かしたのはシキだった。そう言えばシキさんは全く固まってなかったなぁ。
って、え…知らない?
「前回の巫女は失敗しているし。それこそ凰音や凪音なんて何百年単位の事だからねぇ」
そしてゆったり、そんなにちょこちょこカリユガになったら本当に星自体無くなるしぃ。と、付け足す。
シキさん、そんな緊張感の欠片もない…。
「詳しい事が分かっておらず、申し訳ございません…」
「いえっ、そんな―」
チシュウさんってほんと真面目な―…れ?この感…覚…私。
「kU'mE-somOiaYOsomI」
「「「「っ!!」」」」
「柚希…様?」
部屋に緊張が走り、意識のない私の耳をチシュウさんの声が撫でた。
静紫の瞳のその前で・終
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