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落ちていく守人の間で



 オレンジの瞳が私を捉える。
 「俺達は守るためにいるんだ。巫女(あなた)を」
 
 
**********
 
 少し風が吹き始めた。
 私が…巫女?…全く身に覚えがないんだけど。でも、もしかしたら何かを忘れてるだけかも…とか。少し考えてみる。ものの。
 「……やー、やっぱ巫女って言われても私さっぱり分からないし」
 うち無宗教だし。
 「んー、サルみたいなおっきいやつに『ミゴダー』とか言われて追いかけられたけ、ど…」
 あれも怖かった。物凄く怖かった。思い出しただけで沈んでくる。何かギャーギャー喚きながら歯ぁ剥き出しで追いかけてくるし、走るの速いし、本当に泣きそうだった。幸い水がダメみたいで、川を越えたら諦めてくれたみたいだけど…。本当に私が何をしたのやら。
 「…?」
 お二人が固まってる。
 「……どうした…の?」
 「や…やべぇ」「や…やばい」
 顔をひきつらせている二人が見事にハモった。
 「な…何が…デスカ?」
 何だか物凄く嫌な予感がする。思わず私まで引きつってしまうではないですか。ほんとに一体どうしたんですか。
 む?
 左に赤兄さんが、そして右に青が立つ。そして私の腕をがっしりと肩の辺りから抱えた。
 …何だか捕獲されて、引き摺られていく宇宙人みたいだなー。なんて考えてると左側から呼ばれた。
 「巫女」
 「は…はい?」
 つか何ですか、コレ。
 今度の声は右から。
 「オレ達を信じろ」
 「は?」
 いやいや信じろとか言われましても、さっきお会いしたばかりじゃないですか。そりゃ助けて頂きました…が?…………あれ、ふわって??何か地に足ついてません…よ?
 「えっ…う、うそっ!」

 時すでに遅く、気付いた頃には3人仲良く崖から飛び降りていた。
 「ムリぃっっ!!ムリムリムリムリムリムリムリムリむっんぶっふ!」
 「落ち着けバカ。つか、もう遅いし」
 ちょ、何を冷静にっ。しかもさりげなくバカって…!それよかその長い袖で口封じしないで下さいっ。苦しいです!って。
 「ぷはっ、おおお落ち着けっつーか落ちてますがっ!!?」
 あの霧で下まで見えなかった崖にまっ逆さまって!あああ今は霧が流れて下が見えます。やっぱり高いです。ものすっごく高いです。高所恐怖症では無いけど…って、それとこれとは話は別!酷いよ、折角助かったと思ったのに…っ。
 「って言うかなんでそんなに落ち着いてるんですかあああっっ!」
 もうダメだ。私半泣き。
 「おい巫女、黙ってろって。ヤタが集中出来ねーから」
 「へ…集、中?」
 ヤタと呼ばれた赤いお兄さんをみてみる。
 「…?」
 聞き取れないけれど、集中し何かぶつぶつと唱えている。しかしそれよりも、額にあるオレンジの光を纏うものに目が奪われる。彼の瞳と同じ色の宝石みたいな石…と言うか硝子板のようなものに。
 (?何、あの光っているの…)
 私は無意識に彼の額に手を伸ばしていた。
 (石…?)
 「げっ、バカっ。やめろ!」
 反対隣から静止の声がするが、私には聴こえていなかった。
 「っ!?」
 何かを唱えていた彼が私の手に気付き、言葉と光が途切れる。
 「なっ、ヤタ?!術が…っ!光がっ!」
 「ぬ、しまった!切れた!」
 慌てる二人をよそに、私の指がオレンジの石に届くと、バチリと何かが弾けた。
 「っつぅっ…!」
 少し痛かったのか、オレンジの瞳が細められる。
 「つかバカ巫女!何やってん」
 「SosO:e…?」
 何かに乗っ取られてしまったように、私は知らない言葉を発し、妖しく微笑んだ。
落ちていく守人の間で・終







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