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花火。


じめじめとした空気は相変わらずだが夜になると夕方近くまで降っていた雨も完全に止み、月が雲間から顔を覗かせていた。
私たちは手に花火やらチャッカマンやらバケツをもって砂浜に移動する。
バケツに海水を汲んで準備完了だ。海水を汲む際に水に浸かった足がひんやりとして気持ちいい。

「んじゃ、さっそくはじめますか」

まずは打ち上げ花火からだ。
あえてチャッカマンは使わずに私は愛用のライターで導火線に火を点ける。
火が点いたのと同時に数歩離れた私は花火が打ち上げられるのを待った。…3、2、1。
心の中で数えたカウントと同時に夜空に赤い花火が咲き誇った。
うわー、綺麗と私は空を仰ぎながら一歩後ろに下がる。と、誰かにぶつかって私は眉を潜めた。
振り返ってぶつかった相手が誰かを確認する。

「ごめん、…って、何だアレンか」

「何ですかその謝って損したって顔は」

「いやいや、そんなこと全然思ってないけど」

「ふーん、ならいいんですけど」

リナリー達が手持ちの花火をはじめたのでそれまで会話をしていた私とアレンは顔を見合わせて会話を中断してからそれに参加する。
両手に花火を握りしめて、二刀流、だなんて火の点いた花火を子どもみたいに振り回す私。
ふと視線を感じてそちらを見ればアレンが呆れ顔をして私を見下ろしていた。

「………フッ」

「!?今、あんた笑った!?私のこと鼻で笑ったよね?」

「まさか」

「いいや、絶対笑ったでしょ!見たもん、私」

くってかかる私にアレンは肩を竦めて気のせいですよととぼけ顔をする。
おまけに被害妄想激しいんじゃないですかと言ってくるのだからもう私の怒りはほんの少しだけ限界を突破した。

「くらえ、このっ」

ロケット花火に火を点けて先端をアレンに向ける。
ちなみに今の私とアレンとの距離は1メートルぐらいだ。
ロケット花火が発射すると同時に私は掛け声をかけた。

「ロケットぶーんっ」

「何ですかそのロケットぶーん、って」

言いながらアレンはひょいと向かってきたロケット花火を避けた。
くそう、この野郎、無駄に反射神経がいいなと悪態をつきながら私は二発目のロケット花火を用意する。
その様子を眺めていたリナリーとラビと神田は思わず顔を寄せ合って声を潜めた。

「なぁ、あいつらいつの間にあんなに仲良くなったんさ」

「さぁ、知らねぇな」

「もともと気が合うんじゃないかしら」

「や、でもリナリーもあいつらの出会いは知ってるだろ?」

「…知ってるけど。でも、楽しそうよね、あの二人」

言いながらリナリーは小鳥とアレンのほうを見た。
二人は相変わらずじゃれあっている(リナリーにはそう見える)ようで、リナリーが視線を向けたときはちょうど小鳥が新たなロケット花火をアレンに向けて発射しているところだった。

「ロケットぶーん!」

「だから何ですかそのロケットぶーん、って」




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