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背向の謳い



捨てた物に
背を向け
去り行く
夏の夜。


邂逅に咲き乱れる
様々な花に
物欲しさを堪えて
笑みを撒く

光は全てに降注ぐ
在りはしない
綺麗事に
耳を塞いで
瞼を下ろした。


あの日流した涙
噛み締めた思い
忘れないように
刻みつけた。

傷に触れて
痛みが呼び起こす
あの日の誓い
間違いだとしても
後悔に変えず
今を受け容れる。


咲いた花の美しさに
枯れた種の醜さを
強く知る
望んだ筈の景色は
この惨状。

全て分かっていた。

光はその先にあって
この先は闇でしかない。
それを知って
選んで一人泣いた
それでも君は全てに笑んだ。


あの日溢した涙
拙く言い放った嘘
今でも
忘れない。

傷は抉られ
痛みが呼び起こす
あの日の哀しみ
選ばなければ
今は光の中
そうだったとしても
今を後悔には変えない。



捨てた物に
背を向け
去り行く
夏の夜。


捨てた物が
全てでも
誰が愚かと蔑んでも
あの日の涙を
悔いることはしない。


光在るには
闇が要る
だから
そっと。
一人泣く。
後悔じゃない。
明日笑むために。
そっと。
ずっと。


2009/05/25

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