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◆彦星織姫



“織姫と彦星は一年で一回、七夕の日しか会えないの”

まだ幼かった頃。
七夕の綺麗な星空を見ながら、母が言っていた。

“えー、一回なんて少ないよー”

幼かった私は一年に一回というのが、堪らなく少なく、悲しいと思った。

“そうね、だけどね、一年に一回でも織姫と彦星はずっと逢うことができるの、ずっと、ずっと逢い続けれるのよ”

その時の母の笑顔が少し哀しそうだったのを覚えてる。


私は、生まれてすぐに、長くはない人生を与えられていた。





長くは生きれない。

人なんていつかは死んでしまう。
早いか遅いかの違いだ。
ずっとそう思っていた。

だけど。
それがひどく哀しいことなのだということを知ってしまった。


恋をしてしまった。
理由もきっかけだって分からなかった。
なのに、彼のことが頭から離れなくなっていた。
彼と目が合うだけで心臓が縮み上がるように脈打ち、意図せず身体中が熱を帯びた。
何もしてないのに恥ずかしかった。

彼と話せただけで、その一日が幸せでしょうがなかった。

もっと話したい。
一緒にいたい。
手を繋ぎたい。
とりとめのない願望が次から次へと沸き上がり、その都度、得も知れぬ恥ずかしさに転げ回った。

思いを伝えたい。

そんな衝動に毎日悩んだ。

もし、断られたら。
不安が恐怖と相俟って、胸をしめつけた。

甘くて切ない、言い様のない苦しみだった。
そんな、葛藤は心地の悪いものではなく、毎日が充実していた。


けれど、そんな日々にも、終止符を打たなければならなくなった。

『あともって3ヶ月くらいだと思います』

現実はやはり非情だった。




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