5
『織姫と彦星は良いよね』
夏の夜。
彼女は風車の下で空を見上げて言った。
『なんで?』
少年は聞いた。
『だって、一年に一回しか逢えないけど、ずっと、永遠に逢い続けれるんだよ?羨ましいよ…』
少年は彼女を抱きしめた。
そうしなければいけないと思った。
『私だって、ずっとずっと逢いたいよ』
彼女は泣いた。
『逢えるから。絶対絶対逢いに行くから』
少年はそれしか言えなかった。それだけ言って少年も泣いた。
―――そして。
少年は今、風車の下で星空の下、一人空を見上げている。
毎年。この日。
彼女が泣いて笑った。
二人の想いと想いが繋がった夏の夜。
彼女の笑顔を想っていた。
『今年も逢いに来たぞ』
空へ語りかけるように言う。
『ずっとずっと忘れないから』
星空に手を伸ばす。
『いつかちゃんと逢いに行くから』
空を掴む。
『だからそっちでも笑ってろよ』
そして、笑った。
やっぱり涙は堪えれなかったけれど、少年は精一杯笑った。
ありがと…待ってるよ!
彼女がそう笑った気がした。
少年は歩き出した。
風車はあの頃から何も変わらず回り続けている。
ずっと。ずっと…。
廻り続ける。
――Ein Ende
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