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 女の子は驚きました。
 涙も止まりました。
 目の前から大きな、とても大きな泣き声が聞こえたからです。

 それは影でした。
 女の子は知りました。
 その影は、闇ではありませんでした。
 だって、影の後ろ、少し離れた高いところにあった窓の外には、空が広がっていたからです。

 女の子は喜びました。
 女の子は笑いました。
 だけど、涙が出ました。
 でも、苦しくはありませんでした。
 女の子は笑っていたからです。
 笑いながらでも、嬉しくても、涙が出ることを女の子は初めて知りました。

 影は、女の子が笑っていることに気付いて、泣き止みました。
 そして、女の子があまりに嬉しそうに笑っていたので、思わず自分も笑ってしまいました。


 女の子は影が笑っていることに気付いて、影を改めて見ました。

 影は影ではありませんでした。

 影は女の子とは違いました。
 影は女の子よりずっと大きいモノでした。
 けれど、影は女の子と同じように笑っていました。

 影は大きな男の子でした。

 女の子は温かい気持ちになりました。
 いつの間にか苦しい気持ちもなくなっていました。
 腕も、身体の中も痛くありませんでした。
 よく見ると腕には包帯が巻いてありました。


『その…けがしてたから』


 男の子は照れた様子で、前足で頭をかきながら笑いました。

 女の子は腕を振りました。
 腕は全然痛くなくなっていました。
 女の子は顔をくしゃくしゃにして笑いました。


『ありがとう』


 女の子と男の子は一緒に笑いました。
 穏やかな陽の光が二人を穏やかに包みこんでいました。



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あきゅろす。
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