無知な道化の戯曲
あの日、大切な彼は消えた。
目の前の繰り返される現実が苦しくて、独り足掻くのに疲れ、人に、世界に、絶望し、消えた。
流した涙とともに、誰に知られることなく消えた。
その日から僕は消えた彼の代わりに毎日を演じている。
大切な何かが欠けたまま、彼の代わり、見様見真似の日々を繰り返している。
何も分からぬまま、分かった振りでただ色褪せた日々を繰り返す。
分からないことに寂寞とした哀しみを抱きながら、欠けた彼に涙しながら、抜け殻の骸で消えた彼の代わりに流れる時に身を委ね日々を送っている。
本質を何一つ知らず、世界の全てを欺き嘲笑いただ虚空を抱いて毎日を送っている。
意味も価値も理由さえなしにただただ終わりを望み日々を送っている。
彼さえいれば…消えた彼だけを想って、独り此処に彼の代わり佇み、褪せた瞳で世界を俯瞰している。
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