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自重心は大切です(政小)
ここ最近小十郎が陣羽織を着てくれなくなった。俺が元服する以前から着ていた陣羽織で、どんなに着流しを着てくれと望んでも最も動きやすいからと断られ続けていた。それなのに今はその着流ししか着てくれない。別に着流しが嫌だというわけでもなく、寧ろ長きに渡り望んだ格好をしてくれているのだから喜ばしくはあるのだが、こういうのは偶に見るからこそ良いらしい。こう毎日着流しでは見慣れた陣羽織が恋しくなってくる。何より着流しは陣羽織より露出度が高い。惜しげもなく曝された左胸に敵将が欲情し出すんじゃないかと気が気じゃなくなる。近くで戦ってる俺が欲情してんだ、他にも狙ってるヤツが居るに違いねえ。

「小十郎、次の戦も着流しで出陣するつもりか?」

グダグダと考え込んだって仕方ない話だ。それにまだ次も着流しで出ると言われたわけじゃない。早い内に確認しておこうと小十郎の自室を訪れると、返事を聞く前に目の前に広がっていた光景で簡単に想像がついた。

「そのつもりですが?」

「だろうな、見て分かる」

次の戦まであと数日。小十郎は何事であろうとギリギリになって焦るよりも、早い内から準備する質である。今も丁度出陣の準備をしていたのだろう。着流しを入念にcheckしていた。

「陣羽織にしろ」

「政宗様の願いとは言え、お断りします」

間髪入れずに断ってきやがる。そもそも何故あんなにも動きやすいと言って着ていた服を拒むのだろうか。陣羽織を着なくなる前の戦を思い出してみるが、特に変わった事は何一つなかった。寧ろ苦戦を強いられるだろうと予想される戦だったのに、良い結果を築けたくらいである。この時点までで小十郎に変化はなく、その後の宴でも普通に楽しんでいる様に見えた。あまりにも部下と楽しそうにするもんだから、俺が若干嫉妬した事は今は関係ない話だろう。

どんなに考えても見当が付かない。戦とは関係ない事なのだろうか。まさか俺の知らない間に何かあったのだろうか。着流しでなくとも小十郎には変に無防備な所がある。俺に関しては口五月蝿いまでに気を張ってくるが、己の事には疎い。背後を取られて無理矢理…なんて良からぬ事を考えていたら見えない第三者に妬けてきた。取り敢えず強姦説を消したいが為に、陣羽織を出せと命令してみる。

「これがどうかしましたか?」

「それはコッチの台詞だ」

思ったよりあっさりと差し出された。着るのを拒むのだから、見られたくない何かがあるのかと思ったがそうではないらしい。ほつれはないか、強姦された痕跡はないかとじっくり確認してみるも、以前と何ら変わりない。こうなると本当に着なくなった理由が分からなくなってるくる。

「なぁ、何で陣羽織着るのを拒むんだよ」

「そ、それは…答えられません」

「What?何で答えらんねえんだ」

意味が分からねえ。答えられないだけならまだしも何で頬を染めんだ。何で視線を逸らすんだ。何で恥じらうんだ。Shit!可愛いじゃねえか。襲っていいのか?襲えって言ってんのか?…と、今はそんな場合じゃない。この様子からすれば、陣羽織は修繕済みなだけであって確実に何かあったのだろう。それも俺が予想したような事が。だからその時の事を思い出したくなくて陣羽織を避けている。そう考えれば全て納得がいく。

「誰にヤられた」

陣羽織を投げ捨て両肩に掴み掛かる。何があろうと強固であるくせに俺が迫ると若干怯えた目をするコイツがまたcuteだ。この目を見ると苛めたくなる。鳴かしたくなる。ついつい思考が違う方向へぶっ飛びそうになった所に小十郎が口を開いた。

「……すか」

「Ah?聞こえねえ」

「…政宗様は覚えてないのですか?」

どう言うことだろうか。これはもしかしなくとも原因が俺にあるのだろうか。嫉妬から強く掴んでしまっていた手の力が自然と抜ける。これは間違いなく俺が何かやらかしたという事なのだろう。しかし全く記憶に残ってない。

「俺は…何をした?」

「宴の後、酔った勢いで小十郎を……その時、陣羽織を着ていたので…これを着て戦に出たら身体が思い出して反応してしまうのではないかと」

Oh my God!お互い忙しいのもあるが、小十郎は中々ヤらせてくれない。だから滅多に小十郎を抱けることなんてない。にも拘らず酔ったあげく襲って、記憶にないとは。折角小十郎のあんな顔やそんな身体やアレな声を聞けたってのに、記憶に全くないってのはどう言うことだ。これじゃあ単なる最低男でしかねえ。己の情けなさに泣けてくる。

それにしてもこの可愛さは反則なのだろうか。陣羽織を着たら欲情するかもしれないってのは全く持ってけしからん。そんな状態で戦場に立たせれば、間違いなく欲目で寄ってくるヤツが現れるだろう。それこそ気が気じゃない。しかし着流しも着流しで危険だ、これを着て行かせるわけには行かない。どうにか着させない方法はないものかと考えれば妙案が浮かぶ。

「小十郎、今からその着流しを着ろよ」

「お断りします」

「また間髪入れずに断りやがったな!」

「失礼ながら政宗様、鼻の下が伸びておられる。何を考えているのか丸分かりです」

考えてることが分かってるなら、少しは意図を汲んでくれてもいいんじゃないかと思う。とは言えここで引き下がる奥州筆頭ではない。簡単に諦めるようじゃ伊達の名が廃る。いつの間にか丁寧に畳まれていた着流しを手にすると、抵抗してくる小十郎に無理矢理羽織らせる。何も完全に着させる必要はないのだ。少しでも身に纏わせて事に及べば、陣羽織同様この着流しで出陣することは出来なくなるだろう。

「小十郎、可愛がってやるよ」

「ま、政宗様!お戯れを!!」



―――数日後



無理を強いた為に暫く口を利いてくれなくなったが、それだけで小十郎の身が守れたのだから儲けもんだろう。正直な話、感謝してほしいくらいである。勿論、言葉を交わしてくれなくなった間、いじけて引き籠りかけたとかそんな情けない真似はしていない。いじけるなんて事はけして。

「小十郎!準備はで…っ!?」

着流しは回避できただろうと意気揚々に襖を開ければ、視界に入ってきた光景に固まる。少し考えれば分かる事だったのだが、陣羽織も着流しも着れなくなってしまった今、小十郎には戦に出る用の服がない。だからと言って何故その服にしたのだろうか。どうやって手に入れたのかを問いたくなる。いや、入手方法は想像つくのだが。

「政宗様!忍の服と言うのは動き勝手が良いですな!」

「猿飛とのペアルックは止めろ!体格に合ってねえから張り裂けそうじゃねえか!!」

「肩幅は少し…しかし小さ過ぎるという訳でも」

「似合ってねえんだよ!!」

確かに肌の露出は避けられている。しかし露出を避ける為なら俺の陣羽織でも可能な話だ。それなのに何故コイツは他軍の忍から服を借りているのだろうか。これならいっそ農作業用の服で良いのではないかとすら思える。

「…これも駄目と仰るならば仕方ありません」

どうやらこれは小十郎なりのjokeだったらしい。ホッとしたのも束の間、次に視界に入ってきたのは少し派手な色調の服。確かにこの服も肌が隠れてはいる。だがコイツは俺が却下した根本的な理由を理解していない気がする。

「風来坊のならば大きさも問題ないかと」

「………」

「それも駄目ならば長曾我部の…」

「ごめんなさいぃぃ!全部俺が悪いですぅう!!」


その後何度も謝罪した結果、形は同じものの色が違えば気分的にも違うだろうと、急遽用意させた染め衣装の陣羽織を着てもらうことになった。勿論、これが原因で出陣が遅くなったのは言うまでもない話である。

他軍の皆さん、面白半分に衣類を貸すのは止めて下さい。



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一万打、企画その二でございます。
政小ギャグになってるでしょうか?

佐助や慶次、親ちゃんは奥州を訪れそうで、尚且つそれなりに仲良さそうな人達だったから(笑)

親ちゃんの第一だったら露出度高いよね。
意味ない、意味ない。

此処まで読んで下さり有難う御座いました!!


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