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小十郎の憂鬱(日記より/政小)

そろそろあの若い主は政務をこなすのに厭き出した頃だろう。
様子見ついでに茶と菓子を持って行ってやるか考えた小十郎は早々にそれらの準備を済ませ、主の部屋の前まで行き立ち止まる。


「政宗様、失礼して宜しいですか?」

「…構わねーよ」


思った通りだ。
このやる気の抜けた返事は完全に政務を放棄して横になっているに違いない。
主の部屋と廊下を隔てている襖に手を掛けた小十郎は、早速小言を並べなければならないのかと溜め息をついた。しかし、その目に映ったものは予想と反したものだった。
本来ならば既に畳へと全身を預けているはずだ。だが、その若い主は文台に向かって何やら頭を捻らせている。
普段は何かと理由を付けて政務から逃げだそうとする主が文台に。あり得ない現状に驚いた小十郎は暫くその場に立ち尽くしてしまった。


「何、そんな所で突っ立ってるんだ?入って良いって言ったぜ?」

「…その、そろそろ休憩されては如何ですか?」

「もう少ししてからでいい…」


一体この主はどうしてしまったのだろうか。ここまで政務を真剣に取り組んでる姿を見ると逆に心配になってくる。
それでも普段を思い起こすと、漸くやる気になってくれた事に喜びを感じて、お茶と茶菓子の乗ったお盆を手に、頭を捻らせている主の側へ行った。


「何か分からない事でもあるなら力になりますが?」

「Ah…それがさ、どうしても鳴かせられねーんだよ」


鳴かせる?この主は今そう言ったのだろうか。文台に向かって、ただ政務をこなしている筈のこの主が何を鳴かせると言うのだろうか。そもそも鳴かせる必要など毛頭ない筈である。


「失礼ですが、政宗様が何を聞いておられるのか俺には分からないのですが?」

「Ah…?小説書いてんだよ。俺と小十郎のloveでeroticな小説」

「……小説」


小十郎はこの主が真面目に取り組んでいると少しでも勘違いした自分を哀れんだ。
余りにも真剣に文台に向かっているものだから全く気づかなかったが、よく見れば小十郎が遣るようにと準備したままの状態がそっくりそのまま残っている。


「小十郎なら俺にどう鳴かされたいよ?」

「もう、勝手にして下さい…」


嬉々として聞いてくる主を余所に、怒りすら通り越して完全に呆れ果てた小十郎は、盛大な溜め息をついて主の部屋を後にした。
その後数日間、小十郎は口を利いてくれなくなったという。




END

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人生で初めて書いた小説でした。
せっかくなんで移動させましたが、うーん…書き方もっと勉強します。


お粗末様でした!


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