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陽光(リメイク前)
大丈夫、

 いくつもの透明な粒が、何度となく地面に刺さる。
 陽光の差さない、陰気な空の下。


 ――私は、泣いていた。

 じくじくと痛む膝、流れるのはアカイ雫。雨に濡れるそれらを見ないようにしながら、私はずっと、泣いていたんだ。


 そばには、お父さんもお母さんも、誰もいなくて。――ひとりぼっちで。
 このまま、誰にも見つけて貰えずに。『もしかしたら自分は死んでしまうのではないか』、そんな恐ろしい考えに囚われた。


「――おかあさんっ、おとうさんん……!」


 私は泣いた。体中の痛みを忘れてしまうぐらい大きな声で、降りしきる雨音を消すように。
 そうして、誰かが私を見つけてくれることを期待しながら。


 ――…………その時、だった。『誰か』が、やってきたんだ。


「…………」

 私と同い年くらいの、小さな男の子。その子は、私の目の前に膝をついて。


「――大丈夫」


 泣いていた私を元気付けるように、優しい声で言ってくれる。――すると。


「……っ!」

 私は目の前で起きた光景に、目を見開いた。

 青白く、けれど陽光のような、温かい光。それが、私を包み込んでいた。
 まるでお母さんに抱き締められている時みたいな、安心感を覚える。

 思わず身を委ねてしまうような、青色の不思議な光。それを生み出していたのは、――私の目の前にいる、男の子だった。


 私は、その男の子の顔を凝視していた――と思う。


「……ほら」

 男の子は、私の視線になにを感じていただろう。でも、記憶の片隅にあるその声は……やっぱり、優しかった――はず、なんだ。


「もう、大丈夫だよ」

 ――気が付いたら、空はさっきまでの雨が嘘のように止んでいた。

 ……もう、大丈夫。私にそう言ってくれた時、多分、男の子は笑っていた。確証は、まるでないけれど。

 覚えているのは……そのとき男の子が、青い石のついたペンダントを着けていたこと。

 雲の間から差し込んできた陽光が、それを照らして――青い光が、私の目に焼き付いていたこと。


 それだけ、だった――……。


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