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その勝負待った!
○○●


首を少し傾けて、にっこり、という音がつきそうな笑顔で、ご褒美とやらを強請る、縁。


ご褒美?


亮に出来ることと言えば、トレーニングに付き合ってあげるか、剣道の稽古をつけてやるぐらいしかない。
亮の特製たんぱく質盛りだくさんシリーズの料理を振る舞うこともできるが、後片付けが大変な程キッチンを汚す。
一度皐月に振る舞ったことがあるが、まず最初にキッチンの惨状を見て心臓発作を起こしかけていた。
あの綺麗な状態のキッチンを汚しても良いものか。

「俺に出来ることならいいけど……、出来ることなんて少ないぞ?」

戸惑いながら縁に申告するも、縁の笑顔は崩れない。

「だいじょお〜ぶ♪亮に出来る、亮にやってもらいたいこと。あ、亮にやりたいこととも言うかなぁ〜」

縁が人差し指を頬に当てながら楽しそうに言う。
その様子を見れば亮にとっても結構簡単なことのように見える。

「おれ、すげぇ頑張ったじゃん。だから、ね? お願い」

そ、そうだ。本来なら亮自身でやらねばならないことを縁にやらせていたのだ。
亮にして欲しいと頼んでいるのだから、お礼ぐらいしてやらないと。恩は返すべし。

「……いいけど、何して欲しいって?」

そう、亮が了承した途端、縁の口が大きな三日月を描いた。
細まった目の奥は愉しそうだ。
急に雰囲気の変わった縁。


良い予感がしない。


縁の手が亮に伸び、亮の服の襟を掴んだ。
縁の行動が読めなくて、目を縁の顔に戻せば、


「おれをたのしませて欲しいんだぁ」


亮の目が縁のゆらめく青と灰に捕らえられた。


トンッ


亮が背中に固いものを感じて、目で横を見れば、亮は縁に壁際に押さつけられていた。

腰が少し落ちてしまって動きにくい。
すぐ目の前、同じ高さに縁と顔があった。
なんだかデジャヴュを感じるこの体勢。
縁が亮の黒い髪を楽しそうにいじり始める。

「どうやって?」

一応聞いておくに限る。
愉しそうする縁は亮の耳に口を寄せ、

「だから、きもちいいことやろうって言ってんの」

と吐息混じりの声で教えてくれた。
耳に温かく湿った息を感じた。
亮が顔を引いて横を見れば、すぐ近くに妖しく微笑む縁がいる。

「せっくす。だよ?」

囁くような声がエロい。
縁は髪を触っていた手を亮の顔に添えて自分の顔を傾けると、ちゅ。と亮の頬にほっぺちゅーをかました。
ちょっと濡れてて柔らかい感触がした。

女の子のはプリンを押し付けられたみたいだったけど、男はもう少し弾力のある……グミかな。

亮の頬にキスをした唇は男のもので、厚みがある。

視線を感じてか、縁はその唇を赤い舌で一舐めした。
縁の顔には艶めかしい笑みを浮かべている。
エロい目線は亮を射抜いたまま。


うん。アリかもしれない。
亮は腰に小さく重みを感じた。


「おれの方がちょ〜っと背ぇ低いけど、絶対おれのがいいテクもってるよ? 亮に下から眺めるきもちよさ教えたげる」

そう言って、縁が亮の襟首を引っ張って壁から離す。


せっくす、ね。


二人のすぐ隣にはベットがある。
ベットを見た亮を見て、縁が妖美に笑う。
そしてその笑みに返事を返すかのように、亮も色っぽくわらう。

亮の笑みを肯定と受け取り、笑みを深くした縁は亮の襟を掴んだまま、ベットの方へ亮を押した。


だが、亮もまた、縁の両足の間に左足を置き、縁の襟首を掴んで自身の方へ縁を引き寄せた。
縁が少し目を開いて驚いている。


亮は縁の襟を握りしめたまま、ベッドと縁の間に腰を落とし、腰が地面に着いた瞬間に前のめる縁の足の付け根に亮の右足を置いて、勢いに任せて上半身を後方へ倒し、右足を蹴るように押し上げながら両肘を曲げ、縁を亮の頭上後方に向かって、投げた――!




出でよ! 必殺、巴投げ!!!


バフウゥゥンッ


がふっ!! っぅえっほ、うえっほ、ぇえ゛っほ、ガハッガハッ!」

頭を軸に一回転して背中からベッドに叩きつけられた縁。
一瞬のことで受け身も取れず、必死に咳込んでいる。

どうやら成功したようだ。
皐月や、やられる前に、やってやったぞ。誓いは守られたし。

『日常で使える武道』が役に立ったようで何よりだ。
本で読んだ知識をそのまま実践で使えるとは思わなかった。

なんとも清々しい気持ちで汗をぬぐう、亮。


「ちょ、げほっげほっ、あきらぁ、ガハッガハハッかはっ!」

柔道の受け身はとても重要だ。
さもなくば、こうなる。
着地させた場所がベッドの上でも危険だ。


むせて息が苦しそうなので、亮もベッドに乗り上げ縁の背中を擦ってやった。







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