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不器用な優しさ


公園のベンチに座り込んで夕日を見てみる。
センチメンタルな感覚なんてこれっぽっちもなくて、襲い来るのはただただ無情なまでの現実への嫌悪感だけだ。

(…何で俺、こんなんなんだろう…)

最初はただ、楽しいという感情だけで、みんなとも上手くいっていたのに。

「…黄瀬君…?」

後ろから小さく自分を呼ぶ声がして、声の方を見るといつかに俺が部活について聞いた、いつもクラスで1人の黒子がいた。黒子は俺と目が合うと気まずそうに視線を逸らし、歩き始める。

…ああ、黒子なら、もしかしたら。
1人の孤独とかそんなものを分かってくれるかもしれない、なんて甘い事を考えた。
でも、そんなわけない。だってアイツは自分から人を避けている。所詮、俺とは違うんだ、

「バカらしい…」

後ろを向いていた顔を戻し自嘲気味に笑う。ホント、バカバカしい。
夕日の赤が目に染みる。

こんな所で何をしてるんだろう。そう思いベンチを立とうとすると、目の前にタオルと缶コーヒーが現れた。
いきなり現れたそれらをムリヤリ手渡されると、そこには黒子がいた。


「…余計なお世話なのは分かってます。けど…、黄瀬君は上手いんだから、いいじゃないですか。…それ、あげます。涙、拭いて下さい。」

タオルを指差し、それだけ告げると、黒子はそれじゃあ、と身を翻す。

「涙じゃない…。気のせいだから。」

聞こえなくてもいい、そう思いながら発した呟きは見事黒子の耳に届いたらしく、黒子が振り返る。

「…そういう事にしておきます。」

ふわり、
いつも無表情のその顔が僅かに微笑んだ。



不器用なしさ

(どきり、)
(鼓動がちょっと、速くなる)





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