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楽しくない奴ら


カキーン

高い音と共に、空高く白いボールが上がっていく。それは夕焼けで赤く染まった空をぐんぐん、ぐんぐん進んでいって、誰かのグローブに収まることなく地面に落ちる。
ホームラン、なんて何だかやる気のない声が告げてその後に、はぁ…という溜め息がどこからともなく聞こえてきた。

キャプテンの部活終了の合図、声の張った挨拶。野球部らしい雰囲気で部活は終わっていく。
ボールを拾い、片付けを始める他の1年に倣い俺も片付けをしようとしゃがみ込む。

「あー、黄瀬。お前先輩に呼ばれてたからそっち行け」

同じクラスの奴がそう言って部活の更衣室を指差した。そこには数名の先輩が手を振って俺を呼んでいた。

「そっか。じゃあ悪いけど片付け頼む、ありがとう」

ああ、という返事と共に見たそいつの表情は曇っていた。
今更罪悪感感じても、遅いんだよ。



「何ですか、先輩方」

駆け寄ってとりあえず聞いてみる。先輩達は、イライラするという表情を隠そうともせずに舌打ちした。更衣室の中に入るよう促され、嫌悪を顔に出さずに入る。

「黄瀬、お前野球部辞めろよ」

ほら、結局そんな話だ。

「お前一週間しか来てない癖に調子乗りすぎ。確か前のサッカー部も同じ理由で辞めたんだろ?」
「うっわ学習能力なさすぎ」

罵詈雑言が俺に向かって浴びせられる。前のサッカー部でもそうだった。
入学からたったの1ヶ月でこれか。我ながら笑える。

「…何とか言えよ!」

鈍い音と一緒に重い衝撃が頬に来る。鉄の味が口に広がった。
それを合図に他の先輩からの蹴りが入る。

ああ、もういいや。



「何か言ったらー?」
「…辞めます、野球部。お疲れ様でした。」

それだけ言って荷物と着替えを手に、先輩達を掻き分けて更衣室を出る。外はもう夕日が沈みかけていて薄暗い。


しくない奴ら

(別にいまさら辛くはないけれど、)



あきゅろす。
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