何だろう、目の前のコレは。
そう、私は間違いなく料理を作っていた筈なんだ。
「…料理?これがか?」
鼻で笑いながらその黒いのか紫なのか緑なのかよく分からない色をした物体を見て、私の幼なじみであるエリオット=ナイトレイが言った。
そうだよどうせドがつくくらい料理がヘタだよ母さんには奇跡的、というかむしろ才能と言われたくらいだよばかぁ!
「ちなみに作ってたのはオムライスだったりー」
あ、その信じれないって顔を私に向けないでほしいなぁ、私が一番分かってるから。
「お前…、料理くらい作れるようになったらどうだ。仮にも女だろう」
呆れた顔でそう言うエリオットに怒りを込めて拳を振り下ろすも見事にかわされ、行き場の失った右手をさすりながらエリオットを睨みつける。この下睫毛め。
「いいんですうー、私は将来料理の出来る人と結婚するんだから」
それから黒こげになっちゃった私の料理を笑顔で食べてくれて、うまかった、って言ってくれる金持ちと結婚して、エリオットを見返してやるんだから!
「ふん、相手がいればいいけどな」
「むっ!なにそれ、私だって結婚相手の1人や2人…」
「いないからこうやって俺のところにくるんだろ?」
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながらエリオットは私を見下ろす。こんなエリオットを諫めることが出来るのはリーオしかいない。けど生憎今は読書中らしく部屋から動いてくれなかった。エリオット曰わく私の料理を食べたくないかららしいけど、リーオに限ってそれはない、はず。きっと。
「…反論できないのがむかつく…。エリオットの癖に!」
はいはい、とバカにした笑みと口調でエリオットは目の前の料理をひとつまみして、口に放り込んだ。
瞬間歪む顔に、ああこれは文句の嵐が吹き荒れるだろう、と耳と目を塞ぐ。
しかしいつまで経っても聞こえてこない声を不思議に思い、目を開くと、皿の上の物体Aは見事に消えていた。呆然とする私の手を無理やり耳から引き剥がし、耳元にエリオットの顔、が、(近い、)
「うまかった」
「…え」
「わけねえだろバカ。」
そんなんじゃ一生結婚なんて出来ねえだろうな、なんて言いながら笑うエリオットに無言で肘鉄を喰らわせる。
油断していたのか、すんなりと肘は鳩尾付近にクリティカルヒットした。げほげほと噎せるエリオットはそのままに、空になったお皿を持って踵を返す。今度何か作ってもエリオットには持って行ってやらないんだから。
おた
まとしゃもじ
私のときめきを返せばか。
(そうだ、ギルバートなら食べてくれるかもしれない!)
(・・・・!?何だか今すごい悪寒が・・・・)
(何ー?ギル風邪ー?)
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