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燕が地面すれすれを通って素早く放物線を描き、上昇した。

その姿には優雅といった言葉が似合うだろうか。
トシなら一句浮かんだかもしれない。


俺―島崎勝太(後の近藤勇)―は試衛館という剣術道場で四代目を継ぐため、日夜修行に励んでいた。
四代目を継ぐと言っても、俺は父―周助―とは血は繋がっていない。ようするに養子という形で近藤家にきたのだ。

俺はガキの頃、家に盗みに入られたことがあった。兄貴たちはすぐに飛びかかって盗人を捕まえようとしていたが、俺はそれを止めた。
盗むまでは気が立っていて危険だが、物を盗った後は気が抜けるのでそこを狙おう、と。

その話を伝え聞いた周助先生が俺に好意を持たれ、養子にするという話にまで発展したのだ。

俺はいわゆるガキ大将で、喧嘩は強かったし、チャンバラなんかも好きだったからこの話は悪いものではなかった。


「せんせっ!お客様です」

少し息を弾ませて、俺を呼びに来たのは家に内弟子として入門した沖田総司である。

「誰だ?」

「えっと……忘れちゃいました」

「困ったやつだな。それじゃあ、取り次ぎになってないじゃないか」

苦笑しながら、総司の頭を軽く小突き、玄関へ向かった。
こんな光景が当たり前になっていた。

試衛館で実際に剣の腕を磨いている門人は少ない。そんな少ない門人たちで同じ釜で炊いた飯を食うので、家族のような雰囲気があった。

「よう、勝太。久しぶりだな。ちょっくら付き合わないか?」

玄関先には昔からのつきあいの友がいた。

「なんだお前か。何をしようってんだ?」

「なぁに、ちょっくら……」

「ふむ」

「蕎麦でも食いに行かねぇかと思ってよ」





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