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流星の導き
白黒コントラスト
一通り再会を喜んだ後、2人は指定された席に着く。雪菜の隣りは錫也で、悠兎の隣りは羊だった。


「よろしく、土萌君。」


悠兎は羊に右手を差し出すが、羊は別によろしくする気なんてないから、と言ってそっぽを向く。


(土萌羊はなかなか冷たい人間だな…何か、恭弥さんに似てる…)


それを遠くで眺めている雪菜はそんなことを考えていた、が。


「釣れない奴だなー。今度、タルトタタン作ってあげようと思ったのにな。」
「…タルトタタン…?君、お菓子作り上手いの?」
「食いしん坊な妹の所為でな。」


すると心なしか、羊の目が少し輝き出す。そして、そっぽを向きながら右手を差し出す。


「…ま…まぁ、よろしくしてやっても…良いよ…」
「あぁ、よろしくな。」


こうして、美しい友情が生まれたのであった。


(あれ…?なんで僕がタルトタタン好きなの知ってたんだろう…。偶然…?)
(…何かやっぱり少しだけ恭弥さんに似てる…)


***
昼休みになり、雪菜と悠兎は錫也達と昼食に誘われて食堂で食べていた。


「でねっ、イタリアはすんごくご飯が美味しいのっ!この前のね、」


ヴーヴーヴー


「おい、雪菜。携帯鳴ってるぞ。」
「あ、本当だー。えーっと…?」


携帯を、見た途端に雪菜の顔が少し真面目なものとなる。が、皆の方を向いた時にはまたさっきの笑顔に戻っていた。


「ちょっと電話だから、席外すねっ」


そう言って立ち上がり、食堂を出て行った。羊はその姿を暫く目で追っていた。


***
「…もしもし。」


食堂から少し離れた柱の影に少し隠れる様に立ち、電話を取る。


『あ、雪菜?どう?巫女と接触出来た?』
「はい、ボス。…やっぱり彼女は私の幼馴染でした…」
『ボスじゃなくていつも通り、ツナさんで良いよ。堅苦しいのはあまり好きじゃないからさ。』
「…ツナさん。私は、任務をしっかりこなします。安心してください。私はしくじりません。」
『…悲しいよね、ごめ「悲しくなんてありません。私は、ツナさんの期待に応えて見せます。」…そうだよね、ありがとう。』
『いえ、また何かあったら連絡して下さい。』
「うん。またね。」


ピッ。電話を切り、ポケットに仕舞う。柱の影から出ると、少し向こうから郁と直獅と、直獅に引っ張られて歩いている琥太郎の姿が見えた。


「あっ、先生方こんにちはー。今から昼食ですか?」
「おうっ雨宮妹ぉ!さっきの授業振りだなぁっ!こんなところで何してんだ?1人か?」
「いいえ、兄や月子ちゃん達と昼食を食べてたいたのですが、友達から電話が掛かってきてしまったので、此処でお話しをしていたのです。…というか、雨宮妹って何ですか。名前呼んでもらって良いですよ。」
「…お。おぅ、」
「あ、陽日先生って結構ウブなんですね?…ぷ。顔が真っ赤…」
「こらぁぁぁ!水嶋ぁ!大人を、からかうのは止めろーー!!」
「嫌だなぁ。何処に大人がいるんですか、何処に。」
「かっちーん!「少し静かに出来ないのか。」…う、」
「あはは、面白いですね。2人とも。」
「すまないな、雨宮。兄達を待たせているんだろう?戻って良いぞ。」
「はぁーい。星月先生、さようなら。陽日先生、水嶋先生、また後で!」


そう言って雪菜は立ち去り、姿が見えなくなると琥太郎はなぁ、と2人に声をかける。


「アイツの気配、感じたか?」
「あ、琥太にぃも思った?僕も感じとれなかったんだよね。」
「たまたまだろ。あんな素直なヤツが裏に関わってる訳無いって。入学書類にも不審な所、無かったんだろ?」
「…考えすぎか…。俺たちも食堂に行こう。」


そうして再び歩きだす。しかし3人とも少しモヤモヤしていた。


***
パシッパシッ!


矢が的に当たる音が弓道場に鳴り響く。雪菜と悠兎は月子に誘われて、弓道部の見学に来ていた。


「夜久さん、上手でしょ?」


いきなり後ろから声をかけられ、振り向くと弓道部の部長の金久保誉が立っていた。


「はいっ。月子ちゃんの弓は真っ直ぐでとても見ていて、楽しいですっ。」
「でも、あっちにいるぱっつんの彼もなかなか良い弓引きますね。」
「あぁ、木ノ瀬君は経験者なんだ。」
「どうりで。」


誉と話していると、月子が弓を引くのを止めてこっちへ向かってくる。


「ねぇねぇ、雪菜ちゃんもやってみない?凄く楽しいんだよっ!」
「え…?私が…?で、でも、皆真面目にやっているのに私だけそんなっ、」
「ふふっ、構わないよ。」
「金久保先輩もこう言ってる事だし、一回引いてみなよっ。」


ほら、と月子に手を差し出され、取らない訳にもいかず、しぶしぶと立ち上がる。月子に連れられて弓道着に着替えた雪菜は弓の持ち方、引き方を教わり、的の前に立つ。


目を閉じて精神を統一させ的を狙う。

ガラガラガラ


「遅れました。…っ!?」


ビュッ パシッ


弓は的の中心に当たる。


(あ…しまった…)
(あの…馬鹿っ…)


「…なんだったんだ、今の…」
(今のもの凄い殺気は…!)


雪菜が弓を放つ直前に入って来た龍之介の呟きがしんとした弓道場に響く。


「凄いですね。本当に初心者ですか?」
「雪菜ちゃんっ!是非弓道部に入ってっ!凄いよっ!」
「あ…え、ま、マグレだけど、私って天才なのかな!?弓道部に入らないけど入っちゃおうかなっ!?」
「ふふっ。雨宮さん、日本語おかしいけど、凄いね。びっくりしちゃったよ。」


その一連の会話を聞き届けて悠兎は椅子から立ち上がる。


「さて雪菜。そろそろ帰ってイタリアにいる母さんに報告をしなきゃだぞ。もうすぐ約束の時間だ。」
「あ、はーい。じゃあ直ぐに着替えてくるねっ。」


そう言って雪菜は立ち上がり、弓道場を出て行った。


悠兎が周りを見渡すと、月子以外の弓道部の部員は緊張している様に見えた。


(あの馬鹿。大量の殺気放ちやがって。)


***
『…で、雪菜は殺気を放ってしまったわけだ。』


悠兎の部屋のパソコンでツナに繋ぎ、一日の報告をする。雪菜の失態は直ぐに悠兎によって言い付けられた。


「うぅぅっ…ごめんなさい〜」
「…俺の監督不行届きです。ごめんなさい。」
『ま、やってしまったことはしょうがないよ。次気を付けてね。』
「はいっ!もうしませんっ!」
「…あまり信用できないですけどね…」
「ひ…酷いっ!」


ふと、ツナの表情が真面目なものとなり、それに気がついた2人も言い合いを止めて真面目な表情となる。


『で、巫女は、自分が巫女というのは知っていそう?』
「いえ、恐らく知らないかと。雪菜の放った殺気には気がついていない様でした。」
『そうか…。厄介だな。』
「大丈夫です。私達がちゃんと見張っていますっ!」
『そう?頼むよ。期待してるから。』
「お任せ下さい。」
『じゃあ、明日も早そうだから、切るね。お休み。』
「「お休みなさい。」」


***
「ねぇ一樹。雨宮さんに会ったことある?」


場所は変わって生徒会室。誉は一樹とソファに座り、真剣な顔で今日の出来事を報告していた。


「あぁ、まだ会ってないんだ。俺も近々あいつらを生徒会室に呼び出さなければと思ってたんだが…。あいつらがどうかしたのか?」
「弓道の経験者でもないのに、的の中心を射抜き、その時に一般人とは思えない程の殺気を放出しました。」
「おおぅっ!?木ノ瀬〜、気配を消して後ろから声を掛けるな!びっくりするだろう!?」
「あぁ、すみません。」
「お前絶対反省してないだろう…」
「そんな事より、これは星月先生に報告すべきでしょうか。」
「でもまだ黒と決まった訳ではないんでしょう?あんまりこっちが警戒するのもどうかと思うけど…」


んー…と一樹が腕を組み考え始める。よしっとぱっと顔を上げる。


「明日あいつらを此処に呼んでみて、少しでも怪しい素振りを見せたら報告ということにしよう。うし、今日は解散だっ!」


一樹が立ち上がり、それにつられて2人も立ち上がり生徒会室を出て行った。


(だが、雨宮兄妹は月子の幼馴染だと言うのに何故だ?)
(雪菜先輩…少し興味深いな…)
(…何もなければ良いけれど…)

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