あめ色の日々
07
小牧教官の肩で散々暴れた結果、ようやく俺は解放された。あーぐらぐらする。
「ひどいなあ、俺の愛情表現なのにー」
「そんな歪んだ愛情表現いりません」
柴崎さんを適当にあしらうと、いらいらしながらばんっと席に着く。
今日は煮魚だと聞いていたが、メニューの変更でサンマの塩焼きになったらしく少し冷めてしまったそいつを小牧教官の皿の上にぼとっと落とした。
「えー俺が食べるの?」
「今日何のために俺が頑張ったと思ってるんですか」
何があっても食わねぇと顔全面に出して言い張る俺に小牧教官はなぜか笑顔で応じ、煮魚に手を伸ばした。
「もうしょうがないな〜」
「あざーす」
「おいあんまり甘やかすなよ…って、笠原、何か落としたぞ」
やたらデレデレしてる小牧教官に若干退きながら堂上教官の方の様子を伺えば、どうやら笠原さんが何か落としたらしい。
それから教官達の会話を聞く限り、なんと笠原さんは未だに防衛部に志願したことを両親に反対されてるようだ。彼女は優秀な人材だが、やはり親としては心配なんだろうか…
そこまで考えたところで、ふととある人物が脳裏に浮かんできた。
「(…今頃、どうなっているんだか…)」
「ん、森川君どうしたの?」
ぼーっとしてる。と指摘を受け、なんとなくバツの悪い気分になる。
「いえ、なんでもないです」
「そう?…なら良いけど、心配事ならいつでも相談してね」
その小牧教官の発言を曖昧な笑みで受け流し、ぬるくなった味噌汁をぐいっと飲み干した。
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