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馬鹿みたいに真っ直ぐな



目がかすんできたやばいやばい…耳を澄ませば私の血をこくこくと美味しそうに飲む音が聞こえそうだ。
というか、もうすでにそんなこと言ってる場合じゃない。

「は、き…北島」
「?」
「死ぬ」
「え、ああ!すまん」

慌てて首元から唇を遠のける北島の腕に倒れ込む。ああぐらぐらする、ちょっと北島さんアンタ血飲みすぎでしょ殺す気か!北島はもう一度あたしの首元に顔を寄せて今しがた付けた痕をひと舐めした。背中がこそばゆい。


「あまりにも美味くてつい、な」
「…あー」
「痛いか」
「うん」
「すまん」
「…それと?」
「ごちそうさまでした」
「よろしい」

あたしが吸血鬼とこんな関係をもつようになったのは1年くらい前の夜中。
公園前を歩いていれば「ビューティフルですね」と死にそうな男が声をかけてきて「え、何コイツ怖!」って固まったら「もういいや殴られんだけ…もう知らん!」と言ってがぶり。

それ以来この男は自分が死にそうになると私のもとへ来るのでしぶしぶ血を提供してやってる。


北島は確かに血色悪いし運気も無いしバンパイアなんて特殊な体質で生まれちまった可哀そうなひとだけど時々凄く綺麗だ。
例えば夜の散歩と称して一緒に夜の道を歩いたりしてると、月の光をたっぷりと含んだような黒い瞳が稀にきらきら輝くときとか。


「ねえ、北島」
「何だ」
「なんで…あたしの血飲むの?北島がんばればもっとかわいい子んとこいけると思うけど」
「俺に血を飲まれるのは嫌か」
「そんなこと、ないけど」
「俺はな、お前でないと嫌だ」

血が好きなんじゃない。お前自身に惚れてる。北島は北島らしからぬ言葉を吐きだしてから情けなく笑った。この顔はきっとあたしにさよならを言われることを覚悟した顔だ、ああ、かっこわる。だけど






馬鹿みたいに真っ直ぐな

バンパイアらしからぬあなたが、あたしは結構好きなのだ









企画「キミとオレ」様 提出


あきゅろす。
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