リセット-投手- Z
さっと寒い空気が入ってきたと思ったら。
高瀬の部屋のドアが開いて出て行ったはずの叶と三橋が帰ってきたのだ。
「どうしたんだ?」
血相を変えた高瀬と、項垂れる榛名を交互に見て驚いている二人。
まず切り出だしたのは榛名だった。
「…君達…誰?」
聞きなれない言葉遣い。発しているのはそれに不釣合いなきつい釣り目顔。
「――――は!?」
「―ぷ。」
「…?」
目を丸くする高瀬。
思わず吹き出す叶。
わけも判らずキョロキョロする三橋。
「なっ!お前どうした!?」
「…どうしたって…なにが?」
(…っこいつは誰だ!?榛名の皮を被った何かか!?)
と、思わず頭を抱え込んでしまう程である。
「オレの事…わかんねぇの?」
自分を指差し榛名を見れば、「うん、」と素直に頷いた。
「こいつも、こいつもか?」
叶と三橋を指差して問いかけるが、「わからない、」と首を振るばかり。
高瀬は、血の気が引くというのを身を持って知った。
叶も咳払いをして、「これ、やばくね?」
青い顔した高瀬を見る。
そもそも自分のせいだよな、と高瀬はまた頭を抱えた。
とりあえず、俺らはテーブルを囲み座りなおした。
今度は榛名もちゃんと含まれていた。
「まとめると、だ。榛名は全ての記憶をなくしちまったんだな」
叶が腕組しながら言う。
そして高瀬が続けた
「その原因が俺…」
すっかり小さくなり、下を向く高瀬を心配そうに見るのが、三橋…と、榛名だった。
「榛名さん、たい へん。」
三橋は叶を見た。
「だよなあ…」
「これじゃ、野球 できない」
「そこかよっ!廉は相変わらずだな…たく。」
「うへ…」
なんだこの和やかな雰囲気は、と高瀬の目が問いかけた。
「お前ら…もしかして…」
「あ、そだ。廉は戻った。」
にかっと笑う叶に高瀬は思わず身を乗り出す。
「は!!??どうやって!?」
「んー?俺と廉の思い出を再現…みたいになって、そしたら急に記憶取り戻したんだよな」
「俺。あまり…おぼえてない けど。」
「俺もちょっと諦めかけてたのにな、いきなりだったよな、雪見て。」
まじかよ…、と高瀬は肩を落とした。
その姿は思い出っていう所なんてない、と語っていた。
榛名の方をチラリと見れば、俺と目線が合って申し訳なさそうに目を反らすから…なんだかものすごく気持ち悪い。
「あー…、とにかくもう暗いし雪も降り始めたしな。お前ら二人はもう帰ったほうがいいんじゃね?親御さん心配するだろ?」
「でもこいつは…?」
と叶が榛名を見る。
「とりあえず、今日はうちん家に泊まらせる。こいつん家には俺から連絡入れるし。」
「そっか、ま、何かあったら連絡してくれれば…。あ、番号とか教える」
携帯を取り出し番号を交換すると、玄関口まで二人を見送った。
「わりぃな、駅までいけなくて」
「いや、本当解決策何か考えなきゃな…明日また連絡するから」
叶が携帯を持つ手を振る。
「それ、じゃあ…お邪魔しました…」
三橋もペコリと頭を下げて、二人の背中を見送った。
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