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リセット-叶三- Y
今日は寒い。
咄嗟に出てきちゃったから、上着をタカセん家に忘れてきたから尚更…




「ぁ…えと…カノウ、さん?」

さんづけで呼ばれるだなんて、今までなかったからなんだか気持ち悪い感じだ…。
申し訳なさそうについてくる三橋を、どうしたものか…とゆっくり歩きながら考えていた。



あぁ…、なんで俺のこと忘れちゃうんだよ。


よりにもよって俺だけを。



俺が立ち止まると、三橋がドンッと背中にぶつかったのがわかった。

(前見てあるけー…)

それを振り返れば、今にも泣きそうな顔をしている。

「ごめ、なさ…」
「別にいいよ。」

俺を知らない三橋に、何故かとたどたどしい言葉遣いになってしまう。
それでも何か言いたげにする三橋を見逃さなかった。

「何?なんだ?」

じっと見つめると、大げさに視線を反らして更に挙動不審になる。

いけない、と思い一回深く、深呼吸。

「焦んなくていい、待ってっから…ゆっくり言えよ。言いたい事」

俺は必死に笑顔を作った。
そしたら、あいつもホッとした様で、つられて微笑むから、思わずドキッとしてしまった。
これは紛れもなく廉だ。

やはり廉の記憶は取り戻さなければいけないんだ。

と心に誓う。


「よく、わからないけど…なんだか…叶、さんには 嫌われたくなくて、だから…」

話を続けるに連れて顔が徐々に歪み、遂に泣きじゃくってしまった廉に、俺は困ってその涙を拭ってやった。

そしたら廉は少し恥ずかしそうに俯いた。

「絶対、絶対に思い出させてやるからな。」

言いながら、廉の頭に手を置く。

「そんでもって、また一緒にキャッチボールでもしよ。」

その手の甲に冷たい感覚が染み込んできたように思えたら、


「あ」

空からふわりと白い結晶が降りて来ていた。


「雪…か。」

道理で寒いはずだ。
俺も廉も、天を仰いだ。

俺が廉を見ると、ずっと空から降る雪の粒を見上げていた。


「?」
「あ…」

見上げる空を俺もまた見つめた。



あぁそっか。三橋と中学で別れたあの時も、雪が降っていたっけな。
少しでも記憶に残ってんのかな、そのこと…

んなわけないか、三橋は全て、俺の記憶全て消えてるんだもんな。

虚しくなってきたし、あの二人のことも心配だから

「戻ろっか、廉」

Uターンをして廉にいくぞ、といいながら通り越そうとした時に、ぐいっと袖端を掴まれた。

「れん?」

振り返ると顔を真っ赤にして、
でも瞳は大きく開き、何度も瞬きをしている

「ん?どうしたんだよ、廉?」

「しゅ、しゅうちゃ…、修ちゃん。」

俺は耳を疑った。

「今、なんつった・・・?」

「修ちゃん、俺も、修ちゃんといっしょに また、キャッチボールし、たい。」

「戻っ…たんだよな?」






確信するや否や、俺は嬉しさのあまり廉を強く抱きしめていた。

「よかった、廉、戻って、よかった!」
「 、修 ちゃん?」



俺の行動に驚きながら、
でも、少ししたらそっと、俺の背中に回してくれた廉の手の感覚がしっかりわかった。

それだけで俺は嬉しかった。


その時あまりにも舞い上がってしまって、あの日、中学の最後…
廉と会ったあの最後の日に言えなかった言葉を。

俺は、きゅっと抱きしめた廉に確かに言ったんだ

「好きだ」

と。


あきゅろす。
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