たびだちのうた 4 今日も高い空は真っ青に広がっている。 (なんとまぁ野球日和な…) 空を見上げれば欠伸が耐えない。 こんな日は、何もしないで日向でごろごろするのが一番の贅沢だよな。 と思いながら俺は今登校している。 自転車を駐輪場留めると、見慣れた癖のある金髪が目に付いたから思わず早歩きにその後に付く。この時間に登校って事は今日は朝練ないのか。とりあえず部卒してからはいつが朝練でいつがミーティングなのかは不明だ。 「うわ!なんだ、慎吾さんか。はよっス、びっくりさせないでくださいよ。」 何やら気配を察したらしい利央は俺が何もする前に後ろを振り向き勝手に驚いていた。 「はよ、だってお前目立つからさ、ついつい後を追いたくなるんだよ」 「わけわかんねーストーカ行為ですねっ!ていうか、昨日言ったことちゃんと覚えてるでしょうね?」 身を屈めヒソヒソと話だす利央に… えーとなんだったかな、と茶化すと「それはあんまりだ!」と俺のブレザーを掴み揺さぶる。 「わかってるよ、まぁ落ち着けって」 奴の肩を掴み宥めると手を離させ、俺は乱れたブレザーの襟をサッと正す。 「今日まだ会ってないだろ?」 コクと縦に首を振る。 「じゃあ2年寄ってく?」 俺らは顔を見合わせると2年4組の教室へ向かう。 今の時間は生徒の出入りが激しく、やけに目立つ俺と利央(特にコイツ)を道行く生徒が横目で見ては通り過ぎていく。 「ここだ…」 見上げると2−4というインデックス。 ふと気付くと俺の後ろにぴったりくっつき離れない利央。 「あんまくっつくな気持ち悪い」 ぺいっと手で払いのけると「それ酷い!」といいながらもまた俺の肩に両手を乗せズイズイと4組のドアの窓へ俺を押しやる。 自分で確認しろよ…と思いつつ俺は窓をそっと覗く。 「…ん?」 4組の教室にも人がごった返していてなかなか準太を見つけられない。 「居ました?」 自らも覗こうと、今度は俺の顔を押しのける。 コノヤロウ…と思いつつも俺は窓を奴に譲ってやった。 利央は手で双眼鏡を作り窓にへばり付いた。 やれやれ、と腰に手を宛て、居たかーとダルく問いかけると 「…誰探してんスか…?」 後方からの聞き覚えのある声に振り返れば、 「…っぬおああ!?」 目標がすぐ近くに居るもんだから、俺が驚き、その声に利央が手で双眼鏡を作ったまま此方を振り返るとその双眼鏡に目標が見えたもんだから「…っぬおあああ!!!準さんん!!」とやや俺と同じ反応を示す。 こんな二人に準太は苦笑している。 鞄を持ってるってことはこの時間に登校か…案外遅いんだな…これは計算違い。 「準さん!はよっス!」 利央がここ一番で挨拶をして話してる間、 オレは準太の顔をじまじま見ていた。 視線に気付いた準太は不思議そうに此方を見ると「慎吾さん、おはよう御座います」と挨拶するから 「おーはよーおせぇのなお前」 と他愛の無い話を少々。間もなく5分前を告げるチャイムが鳴るので俺と利央は焦ってその場を後にした。 1年と3年を別つ階段の踊り場まで来ると、利央は立ち止まり、くるっとこちらを向く。 「慎吾さん、準さんなんの変化もねぇっすよ!いつも通り眠そうでやる気なさそうで…変わんねぇっすよ?」 チッチッチッと口で鳴らせ人差し指を振る古い返しをすると「慎吾さん古ッ」と必ず理想のツッコミが来るのが利央の良い所だ。まぁ今のところそのくらいしか奴の良い所が見あたらねぇ…つったら怒られるだろうがな。 「ちゃんと顔見なかったのかよ、明らかあれ泣いてるぜ?」 「…鳴いてるじゃなく?」 俺は無言で奴の頭に水平チョップを食らわす。 「やっぱ俺の予感は的中だな。良くて酷い喧嘩とか、最悪別れたか…」 「へぇー準さん顔キレイだからまともに見れなかったんですよ俺」 「ふーん…」 と、もうそろそろ本令が鳴る頃だと察して、なにがあったのかは俺が聞き出しとくよ、と言い残し階段を登ろうとしたらズボンを思いっきり引っ張られた。あぶねぇな。 奴が言うには「そんなことして抜け駆けとか…!」なんて、またくだらない事言うからお前は昨日準太に会ってないから一緒に居ると話がややこしくなんだよ。と納得させ奴をゲシゲシ一階目掛けて蹴り押してやった。 自らの教室に着き、椅子にズカッと腰掛けると携帯を開いて準太へメールを送った。 ====================== 12/11 08:59 To 準太 Sub よ ---------------------- 今日は朝から押しかけて 悪かったな、利央が会い たいって煩くてよ(笑) で、昼時間ある? ====================== ―送信。 丁度次の休み時間には返信が来た。 ====================== 12/11 09:50 FROM 準太 Sub Re:よ ---------------------- 昼大丈夫ですよ。 俺も聞いて欲しい事ある し、じゃあ4限目終った ら2年の踊り場で待って ますね。 ====================== セッティングは完璧だ。 080101 |