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君は知らないだろうけど…
君が俺を好きになる前から、
俺は君が好きだったんだよ。
よく笑う君を見る度にこっちまで笑顔になって、
…本当に、太陽のような人だな、て思ってたんだ。
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「あ…」
7組を通りかかったときに見えたくせのある髪の毛。
机に突っ伏せて寝息を立てている。
「ん?どうかしたか?」
急に立ち止まった俺の事を不思議そうな顔して振り返る巣山。
「わりー、行こ行こ」
小走りしてその距離を縮める。
この気持ちをなんと言い表せばいいのだろう。
きっとそれは知ってはいけないんだ。
(知ってるくせに…)
それを俺はずっと気付かない振りをしていた。
君に優しくして、こっちを見てもらえるようにして、なるべく長い時間を共に出来るようにして、…なんて、女々しい考えが行き来していた。
だからかな?
だから、君は俺を好きになってくれたのかな。
いつか君は俺に言った。
「栄口には好きな人いないの」
正直ギクっとした。
好きな人…。
それは、
見つめる先には君が興味津々な顔してこちらを見つめているから、困ってしまった。
だって、それはきっと君なのだから。
寝不足だったらしい君は俺の話を聞きながら俺の肩に頭を置くと眠りに付いた。
(近い…)
顔が近くて、こんなにもじっくり顔を見るのは初めてだったからよくよく眺めていた。
子供の様な寝顔、だけど…
そっと前髪を分けるように撫でた。
「ん…んー…」
完全に眠りに就いた彼は俺が触れていることには一切気がつかない。
ずっとこのままで居られたらいいのに。
俺だけこんな気持ちなんて…辛いな。
「…、」
分けた額にそっと口付けると、すぐに離した。
(これで、最後にしよう)
「…本当…、ごめん ね」
と言うと、息を呑んだ。
感情が溢れる前に。
君が目覚めたら、ちゃんと笑顔でおはようって言えるように
俺はこの気持ちを封印した。
「水谷、おはよ。」
071228
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