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戸田北合宿物語
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「なぁタカヤ。今日は俺らどこ?」

「今日はあそこですよ。ほら、コッチに来て一番はじめに行ったとこです。」

こんな風に5日間続いた問いかけも今日で終わる。

夏休みを利用して行われるシニアの強化合宿。
都会を離れて隣県の町の合宿所──といっても田畑が広がるただの長閑な場所なだけだが──は戸田北シニアが毎年利用している合宿所だった。

そして5日間続いたオレの苦行も今日でようやく最終日。
ホッとすると同時に、どこか残念なようなそんなわけのわからない感情が交錯するのは、今目の前にいる一つ年上のオレ様投手《榛名元希》が原因だったりする。


『なぁなぁタカヤ、俺のアレどこ?』

『裏庭に干してあります。』

『なぁタカヤ、今日の晩飯なに?』

『んなもん知りませんよ…でも確かカレーだと思いますけど…』

『なぁ、タカヤ〜。ちょっとコレ手伝えって』

『…もう、何ですか元希さん。オレだって自分のことやってんですから、少しは自分のことくらいやって下さいよ…ほんとにもう…』


といった具合に何でもかんでも、後輩だと思って使いっぱまがいの事ばかりをさせられてきた忍耐の日々だった。

投手という人種が全部が全部こんなオレ様性格をしているとは限らないが、少なくともオレが知ってる身近な投手は元希さんだけだったから、すっかり投手に対しては身構えてしまうようになってしまった。

これも捕手属性──ってやつなのかもしれないけれど。


でも出会いこそサイテイ最悪だったけど、半年経ち、一年経った今ではまぁまぁ良好なバッテリー関係が築けてきたような気さえする。
そして合宿所で過ごした5日間で変わったことといえば、ちょっと互いに(というかオレが一方的に世話をさせられている)構われすぎで構いすぎなような気がする──といった微妙な空気が当たり前になってしまった、というところかもしれない。

投手と捕手なのだから、仲が良いにこしたことはないと思うのだが、ここ最近の元希さんはやたらとスキンシップが激しくて、正直反応に戸惑ってしまうことが頻繁にあるのだ。

そう、たとえば──あれは初日のことで…。


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あきゅろす。
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