テキスト
君と一緒に
目の前にはたくさんのアネモネ。あの人はこれ以上何を僕に期待しているんだろう。
君と一緒に、
「正チャン」
うわ、来たよ………。
上司に向かってうわ、なんてアレだが、白蘭さん相手なら関係ない。
「何のようですか?」
「えー、用がないと正チャンのとこに来ちゃダメなの?」
質問に質問で返しながら可愛らしく小首を傾げて聞いてくる。
「いや、その………」
僕が答えに窮していると白蘭さんはイタズラが成功した子供のように笑った。
「嘘だよ。正チャン真面目で可愛いね。
今日はアネモネの花を持ってきたんだよ。」
「また………ですか?」
「ウン!」
僕は溜め息を一つついて白蘭さんに言った。
「白蘭さん、これ以上僕に期待しても無駄ですよ?
はっきり言って白蘭さんのご期待に添える自信がありません。」
僕が一息で言い終わると、白蘭さんはきょとん、とした顔をして、それから優しげにフッ、と笑って僕の方を見ながら、髪の毛を撫でてきた。
僕は白蘭さんの脈絡のない行動にびっくりしたけど、しばらくすると白蘭さんは話しだした。
「僕が、今でも正チャンにアネモネを贈るのは、単にアネモネが正チャンに似合いそうだからだよ」
なんだ、白蘭さんは僕に期待している訳ではないのか。
そう思うと肩の力が一気に抜けた気がした。
「白蘭さん、」
「なぁに?」
「アネモネ、有り難うございます。」
「どういたしまして。」
期待しているよ
(正チャン!)
(何ですか?)
(その笑顔、反則!)
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