Re1:The first sign
H
アイリスとルツキ、二人に声を揃えて突っ込まれてしまったノア。
だがここで下がってしまっては、リーダーとしての威厳も何もない。
軽く咳ばらいをした後、ノアは改めて話し出した。
「…考えてみろ、こいつはクロウディ派だと都市中に放送されちまったんだぞ?ここで野放しにしたら、軍に捕まって拷問されるのがオチだ」
“拷問”
その言葉に、アイリスは少しながら身を震わせた。
そんなノアの言い分に、ルツキも顎に手をやって考え込む。
「成る程…。もしアジトの場所を喋られでもしたら、困りますね」
「だろ?そうなれば、俺達のやってきた事も水の泡になるしなぁ」
自分を置いてどんどん進んでゆく話に、アイリスは付いて行けなかった。
拷問だの、アジトだの。
自分にそんな事は一切関係ない筈だ。
それなのにノアとルツキは、ただじっとこちらを見つめてくる。
嫌すぎる予感がひしひしと伝わってきた。
「な、何よ」
「…仕方ありませんね。アイリスさん、貴女を雑用係として引き入れます」
「はぁ!?」
溜息をついたルツキの言い回しは、不本意という心情が滲み出ている。
しかも雑用係という扱いだ。
「ちょっと!少しはこっちの話も聞きなさいよ!!」
「はいはい、私だって本来ならば反対ですよ。市民を巻き込みたくはないのですから」
「食事も寝床も付いてくるから、軽いバイトだと思えばいいだろ?」
有無を言わさぬ二人の態度に、アイリスはぐうの音も出ない。
そんな彼女の苛立ちを察しているしいノアは、クスッと意味深に笑った。
楽しそうに嬉しそうに。
その漆黒の瞳はアイリスを捕らえて離さない。
「ま、仲良くしよーぜ」
「仲良くできるかぁぁぁあああっ!!!!」
こうして私は、おかしな派閥抗争に巻き込まれてしまった。
反ジルクス組織、セルディス派。
謎のレジスタンス組織、クロウディ派。
…はっきり言って、都会の人間の思考は理解できない。
常識もへったくれもあったもんじゃない。
何より、人の話を聞かない奴らばっかりだ。
ねぇ、レックス。
私はいつ、あんたに会える?
TO BE CONTINUED...
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