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君に届けたい
#04





Knock knock !



「誰だァ? 開いてるから勝手に入れよ」

叩かれたドアの向こうから、半ば投げやりなラクヨウの声。

ガチャ、キィ…、パタン

「今現像中だから暗室のドアは開けんなよ?」
そう言うと、室内は静けさに包まれた。


訪問者は、一通り室内を見渡し、デスクに近づいた。
数十枚の写真が乱雑に広げられている。

一枚手に取り、遂に声を発した。


『なな、何ですかラクヨウ隊長!? この写真!?』


ガチャガシャ、ジャボン! ガタッ!


「ウォ! もしかしてヒイロか!?」

『そのもしかしてですけど!』

「ヤッベ! ちょ、ちょっと待ってろ!」


室内に造り付けられたブースのドアには、汚い字で【暗室】と書かれてある。
その暗室内でひとしきり物音がしていたが、やがて静かになり、申し訳なさそうにラクヨウが出て来た。

既にヒイロの手には数枚の写真が。
真っ赤な顔に青筋を浮かべて、プルプルと震えながら、それでも写真に食い入っていた。


「あ〜その…何だ。良く……撮れてんだろ?」

『こんなの……いつの間に……』


ヒイロが手にしているのは、宴の夜の、長襦袢一枚のみを身に纏っている写真。
という事は、マルコの部屋に行ってからの物だ。

しかも、写っているヒイロ、マルコの胸に吸い付いている。
はたまた一物に口付けている物、咥え込もうと赤い唇を開いている物。

いわゆる裏写真だった。


「お、俺のオススメはコイツだ! どうだ? バッチリじゃね?」
ヒイロの手にある写真の上に、慌てて乗せた写真は登場した時の道中の物だった。


「しゃ…写真集出そうかと……思って、な? ホラ何だ、結構…注文イヤ、評判良くてよ。お前ェの花魁姿がよ……」

『……コッチのがですよね(ゴゴゴ…)』

「ま…まァ船ン中だけで、なんだけどよ……その……スマン!!」

ガバッと土下座したラクヨウ。


だがヒイロは内心ウズウズしていた。


『これ、ぱっと見じゃ私って分かりませんよね、外部の人じゃ』

「は? あ、あァ…化粧してるし、ランプの灯りだけでハッキリ写っちゃいねェから…」

『──オリジナル全てと、焼き増し1枚ずつ』

「え?」

『画像の編集と装丁を任せてくれるなら、花魁の時の写真でのみ、協力してもいいです』

「──マジ? 怒んねェの?」

『正直怒ってます。でも、編集魂が【(写真集)出せ】って言ってる』

これでも私、出版社でバイトした事あるんで。
と胸を張った。

それを見てラクヨウ、ひとまず胸を撫で下ろした。


『売り上げの半分くれるならミリオンセラー約束しますよ?』

某航海士みたいな、チャリーンな笑顔。


「…………(絶句)。あ! それならこれ! 譲れねェのはタイトルだ。これで頼む!」

渡された紙片に一行


O n i - R a n



と書かれていた。


『これは……?』

「オイラン……あ! 間違えた!! N要らねえ!」

『いや、これで行こうよ。インスピレーションきた。文字重ねるよ、こう──』

紙片のアルファベットの下にペンを走らせた。


鬼 蘭



『海賊と言う鬼の中に咲く、一輪の蘭』

「すげェ。カッコイいじゃねェか!?」





写真集【鬼蘭】計画、始動──。

(大丈夫か、オイ)








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