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君に届けたい
#15





何この圧迫感……?

胸の辺りに何かある。
お腹の辺りに何か巻き付いてる。


目を開けると、黄金の草原が広がって……いない。一部だけだった。

少し視線を下げれば、そこには特徴的な細い眉の鳥瞰。


『うぁ……!?(ムグッ)』
お、起こさないように……!

ピクリ……

お腹周りの圧迫が変化した。

あ?
もしかして、これは……!
だ! 抱! 抱きつかれてるんですかね!?


スリスリ……

『……ッ(オ!? おいおいおい!!)』
乳に! 乳にスリスリすんな……ってウォイ!

生乳出ちゃってるんですが!!
ワタクシの生乳にマル様が!
スリスリなさってるんですが!!


「んん……?」

違和感感じたらしいマル様がゆっくり顔を上げた。

「……おはよう、ヒイロ……」

『(パクパク……)←言葉にならない。

「も少し、このまま……」

ぱふっ。 スリスリ……。


『ホ○☆×ゲ*※〜〜〜ッ!!!!』



しばらくお待ち下さい




『ゼェ…、ゼェ…、ゼェ…』

「……落ち着いたかよい……」

『な…何とか…?』


スイマセン。
テンパって顔面から蹴り落としてしまいました。

現在、ベッドの端の端に、壁を背に襦袢掻き抱いて、多分髪は乱れて真っ赤な顔して固まってます。
勿論マル様と向かい合わせになんてなれません。

そりゃ赤くなった顎を擦っているマル様には申し訳ないとは思いますけど。


『ももももしかして、見ました?』

「何度も。いいチチしてるよい」

『な、何度も……(ガックリ)』

「頬擦り以上はしてねェよい」

そうですか……。
でもでも、でもですよ?
ナースちゃん達のがいいチチしてません!?
コレに頬擦りせんでもソッチになさったらいいじゃないッスか!?

って言ったら、

「俺はお前のがいい」

って! それ天然ですか!?


「大体酔っ払って酩酊してるヤツに手ェ出すような俺に見えるか?」

『分かんないじゃん』

「手ェ出してるなら、お前はもっと酷い格好になってんじゃねェか?」

『手は出してないと?』

「あァ、俺はな……」


酔ってお前は自分でそこまで脱いだ。
着替えの入った箱はイゾウがそこに置いてった(と部屋の隅を指さす)。
ここは俺の部屋で、ベッドが一つしかねェから、仕方なく横になった。

そう説明を受けた。


そう言えば、ローザ(だったかな)のチョー辛い酒を煽って、暫くは談笑してたのは覚えているけど、途中からサッパリ記憶が無い。

まず頭が痛い。
完璧に重症の二日酔いだ。


うう、とこめかみを押さえていると訊かれた。

「この部屋に来た事は?」

『……覚えてません』

「じゃあ、この部屋に入ってからの事は勿論……?」

『全くもってサッパリ……。もしかして何か粗相を?』

「いや。……そうかい。ならいい」
と困ったように笑った。



いや、実は。
何かヤ〜ラシイ夢を見た気がしてる。
私がマルコに手を出して……いやいや。
夢だよ、夢。
マルコも何もなかったような事言ってるし。



「しかし、困ったよい」

『な、何がでしょ?』

「いや、お前を風呂に連れて行きてェが、午前中は男衆の時間だ。コッチ来てからシャワーすら浴びてねェだろ? それにかなり汗かいたはずだ、あの酒で」

『あァ……言われてみれば。あ、樽! 樽2つに海水と真水入れてエースに持って来させて!』

「……エース?」





暫くして、海水と真水を満たした樽を抱えてエースが部屋に入ってきた。
その間にマルコには、医務室からトランクを持ってきてもらった。

「ヒイロ、これどうすんだ?」
とエースが聞いたので、片腕突っ込んで沸かしてくれるように頼んだ。
海水の方は辛いだろうけど。

簡易風呂が沸いたところで、叫んだ。


『ハイ野郎共は回れ右! そのまま部屋の外へ進め!』
男2人の背中を押して外に追い出した。

ドアや壁に付いてる窓には、色の濃いシャツで目隠し。
更にドアに鍵をかけ、まだグチグチ聞こえる外に向かって、

『覗いたりこじ開けたりしたら……ぶっ飛ばす』

と低い低い声で囁いたら、ピタリと静かになった。



塩水は血行を改善し、新陳代謝を活発化させてくれます。
それが海水由来なら、ミネラルも豊富です。
だけどベタつきます。
なので、上がり湯として真水を沸かした湯を使うのです。
それは身体も髪も同じ事。

トラベルセットのシャンプーとコンディショナー、ボディソープでスッキリしました。
1回分しかないので、次はナースちゃんの誰かに泣き寝入りします。





サッパリしたところで着替えも済ませ、窓に張り付けたシャツを取り払い、ドアの鍵をあける。

『ウム、見張りご苦労。樽の中身は捨ててくれたまえ』
とエースに指示を出した。

あまり零してはいないし、零したのは拭き取ったから。


「スッキリしたみたいだな。うん、いいニオイだ」
ニカニカしながら樽を運び出すエースを、マルコが引き止めた。

「待てよいエース。これに……ヒイロのダシが『テリャ!』あァ!」
樽2つを海に向かって蹴り飛ばしたのは言うまでもない。


「あ〜あ、樽まで…ってオイヒイロ! そのタオル何!?」

『おお、お目が高いなエースくん』

頭に巻いていたタオルを広げて見せた。


そのタオルには、全面に渡って炎のプリントと、それに重なるようにエースの帽子の飾り。
左上にアルファベットで【ポートガス・D・エース】の文字。

『くじ引きで当たったんだよ〜』

「すっげェ! あっちじゃそんなのあるのか!? 高かったんだろ!?」

『いんや、500えじゃなくて、500ベリーだね。景品の種類とランクあるから、何が当たるか分かんないんだよ〜』

「ゴ…ゴヒャ……?」

下顎床に付きそうですね。
何か見た事ありそうなリアクションですね。



そんな私たちを、マルコは呆れたように笑って見ていた。







**********
こないだのロー○ン取扱いの1番くじで当てたタオルがこのタオルです。
親父のとエースのを出され、
店員「どちらがいいですか?」
『う〜ん……エースので!(ビシッ)』
店員「……ですよねェ〜(ニッコリ)」
『(アナタも好きなんですね、エースが)』
何かホッコリしました。



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