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スタスタと前を歩く原田さんを不思議に思いながら私は後を追いかける。…いつもなら原田の早歩きには着いていけないのに小さい原田さんには着いていけて(寧ろ追い抜かす勢い。)少し優越感だなんて言ったら、流石に怒られるかな。

…っていうか、そんな事日常では有り得ない事だから、幼い分足が短い原田さんがスッゴく可愛く見えてしまう。いつもの原田さんは私なんかとても及ばない程の大人の男性だから。

それよりだ。今は目の前の小さい原田さんをお世話しなきゃ。




『原田さん、原田さんっ』

「…なんだ」

『い、いえ、なんだか様子が、変だなぁと思って…』




そう言うと原田さんはいきなりピタッと止まってなにか考え込むかのように動かなくなった。それから、バツの悪そうな顔をして呟く。




「……まあ、ちょっと大人げなかったか…」

『…え?』

「いや、なんでもねぇよ。これ、早く運んじまうか」

『は、はい』




先程より穏やかで、自分に呆れたような表情をした原田さんはまた歩き初めて、広間に入って行った。…さっきまでの原田さんはなんだったんだろう…。まあ、原田さんがなんでもない、と言うなら、なんでもないのだろうけど、少し気にはなる。原田さんに続いて広間に入ると既に彼は御膳を置いて、いつも自分の座る場所へと移動していた。まだ他の幹部の皆さんは広間には来ていない。




「うまそうだな。…そういや、最近お前ここの味付けに慣れてきたんじゃねぇか?」

『…え、あ、』

「……そんな気にしたか?さっきの俺の態度」

『い、いえ!そういう訳では…。気にした、というか、ただ不思議に思っただけです』

「そうか…」




そう言って原田さんはおもむろに立ち上がり、御膳を並べ終えて少し休もうと正座をしていた私の元に歩いてくる。どうかしました?と首を傾げる私に向かって、原田さんはそっと頭に小さな手を乗せて、照れたように微笑みながら言った。




「嫉妬みてぇなもんだから、気にすんな」

『………』




…それ、は。

さっきの斎藤さんに、という事、だよね。




『………っ』




(…原田さんは確信犯だと思います!)

20101019

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