15
まずい。これは非常にまずい。
私は沖田組長の口を塞いだまま、斎藤組長に視線を向けた。思案顔で真っ直ぐと私を見ている斎藤組長。数分間、その場に何ともいえない微妙な空気が漂う。沖田組長が、苦しいよ、と眉を潜めた時だった。
「……俺はあんたが女だと気付いていた」
『……は…?』
しっかりと私の目を見て揺らぐことのないその瞳は、決して私を気遣っているのでも、嘘を吐いているのでもない。斎藤組長は、沖田組長と同じように私が偽っていた事に気付いていたのだ。
(…何やってんだろ、私)
はぁー、と深くため息を吐きながらその場に座り込んだ。…私は、本当に新選組にいてもいいのだろうか。刀は満足に振れず、正体も隠せず…。自分の事もまともに考えられない私が、新選組の為に…仲間の為に刀を振ることが出来るのだろうか。
…ああ、止めよ止めよ。あんまり考え過ぎると頭が痛くなる。
私がよしっと気合いをいれてから立ち上がると、二人は縁側に座って私を見ていた。
『…なんですか』
「……いや、」
「沙樹ちゃんの百面相が面白いなぁって見てたんだよ。」
『なっ…』
「……総司」
「何?だって一君も思ったでしょ?」
「……………」
『黙るって事は思ったんですね、面白いって!』
「ほら、また。」
『ああもう、なんなんですか!手合いも終わりましたし、私、朝食とってきますから!』
飛ばされた木刀を拾い上げ、二人に背を向けて振り返りもせずにズンズンと歩き出した。だから、気がつかなかった。
(二人が、淡く穏やかな笑みを浮かべていた事に。)
─ 不敵な笑みを浮かべた、 ─
(二人が何を考えてるのか全く分からない…!)
20100605
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