★Ar:series/.#story_zz rUfrIm mea/.



ある日、いつもの様に職場へと向かうと、同僚のセラピストの子がわたしに猛ダッシュで走ってきてそのままガバッ、と効果音がつきそうなほどきつく抱きついてきた。わたしはぽかん、と他人事のように見ていたけど内心パニック状態だったのである。でも抱きついてきた本人がそれを失態だと思ったみたいで素早く離れてしまった。もっとギュッてやってくれてもよかったのになあ、なんて思ったのは内緒。


「あの…どうしたの?」
「ごめんねっ!つい…。ってそれはどうでもよくて!ねえ、リッちゃん!貴女…クロアくんとお付き合いしてるって本当なの!?」
「え?お、付き合い……おつき、あい!?」
「なんか色んな所でその噂聞くんだけど」


付き合っていると言われたら、違うとしか答えられない。確かにわたしはクロアの事好きなんだけど、それを本人に伝えたことはないし第一、彼がわたしのことを好きな様には見えないんだよ…ね…。友だち否下手すれば妹みたいな扱いをされている様にも見えるのだ。よくわからない関係な為、曖昧に答えを濁すとその子も曖昧な表情で、しかも少しホッとしたようにそうなんだー、と返した。


「まぁいいや。でも、吃驚したわよ。だってクロアくんてあのルカさんとお付き合いしてるみたいなんだもの」
「………え…っ?」
「もしかして知らなかったの?結構有名なのよ。クロアくん、アタシから見てもイケメンだと思うけどルカさんがいるんじゃどうしようもないしね」


頭の中が、一瞬にして真っ白になってしまった。なんとなく予想はついていたことだったりする。だってクロアはわたしの目から見たってやっぱり格好良いなあって思ったし、あの優しさとか心の広さとか、そういう所にわたしだって惹かれた。クロアは人気があるんだろうなっていうのはわかっていた。わかっていた、はず、なのに…他人からそれが事実なのだと告げられると冷静を保とうとしてもショックを隠しきれない。


「…大丈夫?リッちゃん顔、真っ青よ?」
「え、あ、…うん。大丈夫、だよ」
「なんかここ最近ずっと思いつめていた様に見えたけど、無理しないでね。リッちゃんここの一番人気だから休めないのもわかるけど、そんな顔色じゃお客さんだって心配しちゃうわよ」
「平気!平気、だから…っ。ちゃんと仕事するよ」
「そう…」


この子だって鈍くない。わたしがこれ以上聞いて欲しくないと察してくれたみたいで、助かった。


「そ、それにしてもクロアって……恋、人いたんだね。しかもルカさんなんて。わたし、よくクロアと会うけどそんな話聞いたこと無かったよ」
「へぇ…。リッちゃんには言う必要なかったんじゃない?それにあの二人、あんまり会ってるって感じしないしね」
「そうなの…。あの、じゃあそろそろ準備してくるね」


ツカツカとヒールの音が響く通路を歩きながら、考えた。クロアはなんでそのことを言わなかったのだろうと。わたしには関係ないから?言う必要がなかったってそういう、事なの?そういうことを話せるほどわたし達の中は親しくはなかったと、言いたいのだろうか。そう思うと、なんだか悲しくなってきた。今までのクロアの優しさは全部同情とかそんなので、心から心配してくれてなかったんじゃないかなって、思ってしまった。しばらくしてようやく涙をグッと封じ込めて、それから今日の仕事に入った。

今日のセラピをするお客さんは初めての人で、気を抜いてしまったのかそれとも、先ほどのショックを封じる事ができなかったのか。詩もなんだか調子が乗らなくて必死に調子を戻そうとしていたら、そこに隙が生まれてしまったのか、急に客の男性がグッ、と肩を掴んできて、避ける事もできず、右の鎖骨の辺りにチクリとした痛みが走った。



zz rUfrIm mea/.
(悲しい、逃げたい)

ちょっとルカ扱い酷くなりますがお許し下さいま、せ…。クロア夢ですし!(言い訳)
20081205







あきゅろす。
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