発展途上キャンバス1




将来の夢が子龍様のお嫁さんなんて、願ったこと…ありますけど。



発展途上キャンバス*





いや、普通、小説とか夢小説とかって…自分の想像とか妄想で作り上げるものでしょ?『夢』がつくぐらいなのだから作者の夢とか、こうなったらいいなぁ…なんて希望からできるから人それぞれ観点とか表現が違うのだけど。でも、想像っていうことは自分が実際に体験したことがなくて、その現場に自分がいたら…なんてどれだけ思ったことだろう。ほんとう、に。


「……スランプきちゃった…。ど、どうしよう、」


夢小説作家な私は、この世界から蜀の世界にトリップした女の子と趙雲のお話を書いているんだけど、あぁぁ私馬鹿だ、この役に立たない頭で趙雲と現代風味なデートとかさせるんじゃなかった!!そもそも趙雲…デートなんてするイメージがない。執筆途中のパソコン画面には趙雲がまだもらってもいない休暇をもらったことにして、先に主人公の篠乃(実は自分と同名にしてしまった女の子)にデートのお誘いをしてしまった、と言うところまで書いてストップしている。


「趙雲とデートかあ…できたらいいのに……って違う違う違う、そんな私痛い人じゃないしただそうすれば執筆も捗るって思っただけで!」


大体時間だって違うのだから会えるわけがないし、ゲームのキャラクターだし、トリップなんて都合がいいことは所詮夢小説の中でしか起こり得ないことだから、やっぱり無理なんだよね。そんなことを考えていたら今日はもうパソコンに向かう気力もなくなってしまった。とりあえず、疲れたから寝ようと決めてパソコンの電源を切り、素直にベッドへともぐりこんだ。ネタ浮かんでくれないかなあなんて考えながら睡魔が襲ってくるのはもう日常と化したこと。



********



「え?二日休暇を頂きたい、と…ですか。子龍にしては珍しいことですね」
「いえ、ここ最近働きづめで篠乃に寂しい思いをさせているのではないかと思いまして」


夜――…建物全体が静まり、一日が終わろうとしている中、その奥まった部屋に趙雲は訪問していた。


「まぁ、貴方は有給休暇もありますし、いいのではありませんか?最も…あまり篠乃殿の腰を痛めないようにしてあげてください。彼女の行動に支障をきたしてはいけませんから」
「…っ、こ、孔明!何を言ってるんですか!?そっそんなこ、と…っ」


いくら趙雲が焦ろうともその部屋の主である諸葛亮は涼しげに扇を揺らして微笑むだけだ。力で勝てても彼に口で勝てることはないだろう。諸葛亮は夜も遅いからさっさと出て行きなさいと言うが、趙雲もそんなのわかっている!と少々乱暴に扉を閉めて廊下へと出た。それとともに彼の口からは大きな溜め息がひとつ。
趙雲ぐらいの将が休暇届けを出すならば劉備の元へ行くのだろうが、そのような細かい兵士の動きを管理するのはそれよりも軍師である諸葛亮の方が上手なのだ。どんなに人柄の良い劉備でも、同僚の諸葛亮への話しかけやすさと比べたらやはり遠慮してしまうだろう。趙雲はかなり口下手でもあるので、余計に、だ。


「確かに行為をしたことは無いことも無いが、ああやって堂々と言うことでもないだろうにっ!人をからかって何が面白いのだろうか」


ぶつぶつと呟きながら自分も寝床に早く入ろうと自室へと歩く。さして急いでもいないので歩く速度は緩やかだ。

――と、前方の壁際に小さな桃色の影が見える。あのような衣服、見たこともないが、髪型や顔を見ると…間違いなく彼女、篠乃である。何故あんなところに寄りかかっているのか。自分を待っていた、とか?いやいや、もう眠っているはず。夜更かしはいけない、と、早めに執務を終わらせて眠るようにいつも言っているのだから。……見たところ眠ってはいるようだが、場所が場所だ。


「篠乃!起きなさい!」


何度呼びかけても起きるどころか身動きする気配すらないので仕方ない、と、軽々抱き上げて趙雲は篠乃の部屋へと向かい、柔らかな寝台へその女子を横たわらせた。





1:20080507







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