ずっとずっと捜し続けて


俺は、凛央と出会ってから眞魔国や魔族の話、俺や有利が魔王だっていう話はした事は無かったはずだ。有利も多分していない。だから、俺は今目の前に広がる光景に驚きを隠せなかった。知り合い?凛央と、有利の友だちが?しかも、大賢者に"様"なんてつけちゃって跪くんだからよっぽどの仲なのだろうか。どちらにせよ、俺の機嫌は降下しつつある。


「やっと、会えました…」
「うん。僕も、リオの消息が全然掴めなくてずっと捜してたんだよ。会えて嬉しいよ」
「これでとりあえず、次からは普通に転生できます、大賢者様」
「僕は今、大賢者じゃなくって村田健。だから、健ちゃんって呼んでよ」
「あ、はい!健ちゃん様!」
「様、はいらないよ」


とても疎外感を感じて、思いっ切り不機嫌モードになりました俺。そろそろ我慢が限界に近付いてきた為、弟の友だちから凛央を引き離し、とにかく俺の元へ引き寄せる。俺に拘束された凛央は不思議そうに俺を見上げるが、大賢者様は、ラブラブだねえ…と呟いてから座れる場所で落ち着いて事情を説明してくれる事になり、大人しく俺は着いて行った。


「とりあえず、何から話せば良いかい?」
「まずはあんたと凛央の関係をスパッと教えてくれ」
「うーん…、そうだな、今で言う僕のマネージャーみたいな位置にいたかな、リオは」


主従の関係ほど冷めては無く、仲の良いお世話係みたいなものだったらしい。それでもいい気はしないが。とりあえず恋仲でなかったことに納得する事にし、もう少し詳しい話しを尋ねた。
凛央と弟の友だちが大賢者だった頃、初めは主と侍女の様な関係だったらしいのだが、知識豊富な大賢者の癖に食生活はあまりにも適当で、とにかく知識を集める事以外にあまり興味がなかったようで、大賢者の私生活は見ていられないものだったと言う。そんなこんなで凛央が世話をしていたら次第に打ち解けていったらしい。本当にマネージャーの如くいつも大賢者の傍に仕えていた為、いつの間にか凛央には「双黒の美姫」とかいう二つ名がついていたようだ。


「…待て、じゃあなんで血盟城に凛央の肖像画が無いんだ?」
「ああ、それはリオの立場もあるし、それに彼女は四千年前の創主との戦いには参加してないんだ」
「参加してないっていうか、健ちゃんが貴女は連れて行けません、とか言い出して…」


で、凛央は、創主が封印された後も大賢者には会うことができず、未練が残り、当時の姿と殆ど変わることなく転生を続けているのだと言う。幾度となく転生しているものの、大賢者が転生した時代とはずれてしまいなかなか再会できず、ようやく今、再会が叶ったというわけだ。
そして凛央は一呼吸置いてからこう告げた。


「この間、勝利に、私の両親がいないって言ったでしょう?」
「そうだったな。…もしかして、」
「うん。私、自分の体ごと生まれ変わりしてるから、魂の器が必要無かったのよ。だから人体から生まれるっていう事もないし、両親がいないのは当然よ」
「成る程な」


でも、それは家族が今までいなかったと言っているも同然で、以前生きていた時代で知り合いがいたとしても、きっと捜し続けていた大賢者もいなくて、身内だっていなくて、それはとても寂しいことなのではないかと、俺は思う。


「やっぱり、俺、お前の事幸せにする」
「…え!?」
「お兄さん、すっごい爆弾発言!」
「真面目に言ってるんだぞ!家族がいないってきっと辛いんだよな…?だから、凛央を嫁に迎えてやろうかと」
「本気?」
「勿論」


抱き寄せた凛央の顔を覗き見るとやはりというか、顔を真っ赤に染め上げて半泣き状態だった。やっぱり可愛いなー、さすが俺の選んだ女の子だ。世界で唯一ギャルゲーのあの子に勝てる人物だ。が、このまま大賢者様を除外して二人の世界にレッツゴー!としようと思った瞬間に、俺たちの間にガッとその大賢者様が割り込んできた。俺を見つめるそいつの目は笑っているのに、氷点下並みの冷たさを感じさせられた。


「悪いけどお兄さん、今僕がリオと同じ時を生きているという事はね、リオの身元引受人というか保護者というか、とにかく僕がその立場にあるんだよ?わかりますか?」
「…そうなのか?」
「多分、そうかも。四千年前も結局ずっと大賢者様にお仕えしていたから…」
「だから、簡単にはあなた方の結婚は認めませんっ!」


にーっこりと、それはもう超が付くほど輝かしい笑顔で俺たちを見遣った。別にお前が何を言おうと俺は娶る気満々なので、大した動揺を受ける事は無いのだが。問題は、恋仲で無いとはいえ四千年もの間、この弟の友だちを捜す為に転生し続けてた凛央がもしかしたら、やつに懐いて懐いて懐きまくって、その内別れましょ?とか言い出したらどうしよう、という事だ。絶対それはいかん。それだけは避けなくてはいけない。こう考えると有利と凛央の仲なんて随分可愛いものに思えてくるのである。
元々この弟の友だちとは仲が悪いと言うか、反りが合わないと言うか。もう、溜め息しか出ない。



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大賢者様、髪の毛を梳かすのが苦手とかだったら凄く可愛いと思いませんか^^^
20090327




 


あきゅろす。
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