無自覚?


私は年中通して暑がりだったりします。普通可愛い女の子といえば、冷え性だったり低体温で、寒いから温めて欲しいなっ!と語尾にハートマークがつきそうな勢いで彼氏にぎゅっと抱き着く、という感じだと思うのだけど、私は残念ながらそんなに可愛い子ではない。でもこの暑がりというのは生まれつきではなく、元々は私も寒がりだった。
そう、昔は。
でも、あまりにも寒くて自分のしたい事が出来ないと困るという事で、少しずつ体質改善をして今に至る。とりあえず暑がりが良い訳ではないけれど、寒い寒いと凍えているよりは、いいかなと思うのよね。


「あ、勝利おはよう」
「ああ、おはよう。おいおい凛央、そんなに薄着で寒くないのか?」
「うん。全然まったく」
「あのなあ…、暖かくなったとは言え、俺だってまだ寒いと思うぞ」


私と勝利では服装に大分違いがある。勝利は私が寒さを我慢しているのだと思っているみたいで、自分が羽織っていた厚めのジャケットを脱いで私に着せようとする。いや、だから本当に寒くないんだよ…?私が今着ている服はといえば、丈の長いパーカー、中にキャミソール、下は短いショートパンツ。それに、膝上のソックスを。あんまり絶対領域とかそういうのを重視して選んでいるわけではない。っていうか、私がそんな格好しても私自体に魅力があるとは思っていないから、大した事は無いと思う。


「とにかく!風邪でも引かれたら俺が困るんだ、着ておけ」
「本当にいいのに…」
「コート持ってくれば良かったかもしれないな。脚が冷えるだろう。お前、いっつも人より薄着だから心配だったんだよ」
「服が無いわけではないからね、一応言っておくけど」


季節関係なく、基本的に私はジーパンは殆ど穿かない。嫌いというか、熱が篭って暑いのだ。だから一年の半分というか、七割ぐらいは膝上の物を履いている事が多い。寒いと感じることは勿論、あるけど、その時は余分に服を着ればいいだけで暖房器具は自宅には置いてない。決してお金が無いのではなく。


「まあ、凛央が意図して俺を誘ってるのではないのは、わかってるぞ、わかってはいるんだ」
「さそっ…!?」
「でもな、俺ん家とかならまだしも、学校とか人口密度の高い首都だぞここ。誰に触られるかも知れないんだから少しは危機感持てよ…。俺の心臓に悪すぎる」
「ご、ごめんなさい」


いいんだけどさ、と大して気にもしないように私を向いて微笑んだ。勝利は何だかんだ言って結構私の事考えてくれているのだと初めて知った。と、勝利は喉が渇いたと言うので、近くの公園にある自動販売機に買いに行く事にし、そこへ向かい歩を進めた。


「学校だったら、お前みたいな服装の子もいるだろうがな、秋葉は危険だ。あそこでそのショートパンツ穿いて脚晒してみろ」
「どうなるの?」
「美味しそうな果実だー、とかもしかしたら善からぬ妄想している野郎共がいるかもしれないんだぞ」
「そうかしら…、いや、それは無いと思うけど」
「謙遜 し す ぎ だ!」


大きく溜め息を吐かれて、私は何と返事していいかわからなくなってしまい、見えてきた目的の公園を指差して、買っておいでよと促す事で話しを逸らした。そんなに服装如きで男の勝利がピリピリする必要は無いのに。この様子だと、有利君に対してもこんな感じなんだろうと思う。苦労してるんだなあ…。
陽が高くなってきて気温も上昇しているのがわかった。私も飲み物を買おうか、と公園の敷地内に入ってから小走りに勝利の元へ向かった。が、そちらにしか目を向けていなかった為に、横から何かが来るのを察知するのが遅れてしまった。
ドンッ、と効果音が聞こえた。


「っ、大丈夫!?」
「あー…、はい、大丈夫大丈夫…、平気で、す…」
「ん?どうしたの…?」


ぶつかったのは、黒く外にはねている髪の毛に、眼鏡を掛けて、青いブレザーを着た男の子だった。多分高校生。眼鏡を掛けた、と言ってもぶつかった拍子にそれは落ちてしまったので私が手渡すと、いそいそと掛けなおした。なんだか癒される。そして、どこか懐かしい感じがする。しっかりと眼鏡を装着完了した男の子はこちらを見る。なんだかよくわからないけど、何故か驚きに目を見開いていた。


「き、君は…!」
「…え、な、なに」
「僕の事、忘れちゃったの?」
「あー、はいはいはいはい、そんなベタな口説き方は駄目だよ。弟のお友だち」
「口説いてないです!友だちのお兄さん」


弟のお友だち?勝利が戻ってきた事により、彼が誰のかは大体わかった。多分、有利君の友だちなのだと思う。あんまりこの二人は仲良さそうには見えないけど。それにしても、彼は私と会った事があるのだろうか。思い出せない。確かに彼を見ると何か初対面ではない様な気持ちが湧いてくるけれど。


「…僕は転生してるから容姿は違うけど、リオ、君は変わらないね」
「凛央、知り合い…なのか?」
「あの、もしかして大賢者様…?」
「そ、御名答〜!久し振りだね」


その言葉を耳にした瞬間、記憶がどんどん脳裏に蘇ってきて。やっと、と呟いてから迷うことなく私は、その彼の手を取って、片膝を地面に付けた。



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名前出してませんがムラケン登場!
20090327




 


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