これは何の拷問ですか?



「よし凛央。あいつは連れて来てないな?」
「ええ」
「今日こそは邪魔なんてさせるものかッ…」
「こんにちはー!リオの保護者兼、皆のアイドル、村田健ですっ!」
「……貴様…」


突然、勝利は秋葉原に行くぞと私を連れてとある店にずかずかと人混みを掻き分けて歩き出した。そして今日は、というか今日も、大賢者様こと健ちゃんが一緒。最近健ちゃんは知らない間に隣に立ってることが多くて。勝利と健ちゃんはあまり相性が良くないらしく、勝利は微妙にあの方の事に会わないようにと警戒しているんだけど、毎回毎回無駄に終わる。
そもそも、今の時代で健ちゃんがアイドルかと言えば違うでしょうに。尤も眞魔国じゃアイドルだろうけれど。当然のように一緒に目的の店へ入る健ちゃんは確かに、可愛い、んだけど、うん…。


「すみません、この間例のやつを注文してた…」
「あ、はい、渋谷様ですね!こちらです」


少し離れた場所で店員さんと会話をしている勝利の様子を二人で見ていた。受け取っている商品はきっと、というか店が店だからきっと何かのゲームとかファンブックとかそのテの物だとわかっているのに、その立ち姿も様になってるなあ…と思った。パソコンの画面に向かってデレデレしてる勝利も、まあ…好きなことは好きだけどああいう、微笑みは凄く格好良い。少しだけあの女性店員さんが羨ましい。


「お兄さん、随分大層な物買ってるね。ゲームでは無いみたいだけど」
「え、あ、本当ですね…気付かなかった」
「もしかしてお兄さんの格好良さに見惚れて、ボケーっとしてたかな?リオちゃん?」
「ちがっ!あの、違いますから!」
「はいはーい、照れたリオも可愛いねえ」


私をからかって遊ぶというこの方の趣味は、姿や性格が変わった今でもあの頃と変わらない。少し泣きそうだ。大賢者様は皆にはニコニコと笑顔を振りまく癖に私や眞王様に対しては何処か黒属性になってしまう。少し反抗でもしてみようかと健ちゃんの方を見ると、どこからともなく拳がそこを過ぎり、健ちゃんの姿が消えていた。…消えたのではなくしゃがんで頭を押さえていた。拳の持ち主は、大きな紙袋を片手に持った勝利でした。


「人の彼女に手ぇ出すな」
「あ、もう買い終わったんですかー?」
「とっくに終わってる!」
「ところで勝利は何を買ったの?」
「ああ…メイド服」


この人、コスプレ趣味もあったのか。


「違うよ、俺が着るんじゃなくてお前が着るの」
「…は!?」
「いいですね!お兄さんさっすがー!僕、結構主従萌えするんですよー、リオにメイド服着せて、それから首輪と手錠装備させて、猿轡噛ませて…僕が鞭持って」
「やめろ!違う方向に持っていくな!俺はただメイド服着た凛央が、ご主人様だぁーい好き!って言ってもらうために買ったんだ!」
「えー、なんかつまらないですよぉ。それだったらメイド服よりもバニーガールとかの方が似合うと思うんですけどー」


なんでもいいけど、この二人の会話を止めて欲しい。大体、どっちも着たくないし、そんな拘束して何が楽しいんだ。大賢者様とあろう方がそんなプレイが好きなんて四千年前にずっといた私でさえ知らなかった。私がそんな服装しても何にもならないし、そういう服を着せるならもっと綺麗な人なんて沢山いるんだからその子に着せればいいのに。
とにかく、大衆の面前で恥ずかしい会話をやめてください。


「バニーガール?凛央が?メイド服の方が絶対似合うに決まってる!少し気が強い子にご主人様って言われる快感をお前は知らないのか?」
「言われた事も無いくせに何が快感ですか…。リオの白い肌には黒のバニーで体の線を強調させてあげるのがいいんです!じゃなかったら、やっぱり拘束プレ…」
「二人ともやめなさい!本当にやめてよ!」


二人に挟まれて、私に着せる服の話しをしているのは明らかで、皆私の方を見てくる。二人は平気な顔をしているけどこんな話、もっと人のいないところでするべきなのをわからないんですか!と叫びたかった。


「大体、勝利はメイド萌えなんて二次元でしかしないんじゃないの?私が着たってそんな萌えの欠片だって感じられないわよ絶対!」
「そんなことは、ないッ!お前最近妙にデレデレにツンが交じってきたのを俺は知っているぞ。そんなツンデレメイドな凛央が恥ずかしながらも俺にご主人様って言ってくれたらどんなに可愛いことか!」
「恥じらいかあー、僕はやっぱりリオの泣き顔の方がソソるなあ…」


私は大賢者様にも健ちゃんにも泣き顔を見せた記憶はない……はず。それにツンデレてるつもりも無い。メイド服なら有利君にこそ似合うと思うんだけどな…と勝手に想像してみた。とにかく、ここにいては二人の会話のネタにされるだけなので、逃げる様にして走り去る事を決めた。


「ちょっと待て、凛央!」
「逃げられると思ってるのかな〜?」
「追いかけるぞ、弟のお友だち」
「了解!」


結局掴まる事になるのでした。





過去拍手お礼でした!
村たんの方がゲーマーだと思ってしまうのは私だけですかね…。
20090502




 


あきゅろす。
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