それでも諦めないで



みんなみんな、いなくなる。
そりゃ、神羅は時として非道な命令を私たちソルジャーに下すけれど、でも大切な人もこの会社には沢山いる。みんな大好きで、死ぬまでここで働いてみんなと生きていればいいと思っていた。それが私の幸せで、誇りなのに。

「俺とお前は違う」
「なんで、同じソルジャーでしょ?」
「違うよ。俺は穢れてる。***はどれだけ血を浴びても美しい」

そう言って離れていったジェネシス。アンジールもまた、自らをモンスターと言って、消え去った。私にソルジャーの誇りを、教えてくれたのは貴方だったのに。ラザード統括もいない。ソルジャー部門は人手不足となったけどそれ以上に、もっと大きな穴が空いてしまった。


「…ぃ、おいっ!聞いてんのか!?」
「え、あ…ざ、ザックス?」
「大丈夫か?任務中にボーッとしてんなよ、危ないだろ」


肩を掴まれ、がくがくと揺さぶられた。ザックスにしては普通の力かもしれないけど、結構痛い。そしてぶんぶん揺らされると意識が吹っ飛んでいきそうになる。彼の言うボーッと、の原因はそれだけじゃないと考える事ができる。人員不足で、しかもクラスファーストのメンバーばかりが行方不明になるものだから、当然、その分を残った私やザックスが埋めなくてはいけない。もう一人、セフィロスはラザード統括のポジションに自然となってしまったので彼は現場に赴く事が殆ど無くなった。どうせ、任務だと言い渡されても今のセフィロスじゃ、拒否しそうだから丁度良い。私たちだって彼らがいなくなったこと、ショックじゃないわけが無いのに。


「でも今日の任務、わざわざ二人で出向く事もなかったよね。敵も弱いし」
「…そりゃそうだけど、今の***みたいに生気が抜けた顔されちゃ誰だって一人で行かせられるわけないだろ?セフィロスの旦那だって、随分と心配してたぜ」


私とザックスは、ジュノン周辺に発生したモンスターの群れを討伐しに向かっていたところだった。といっても、数が多かっただけで大した強さの敵はおらず、思ったより早く任務が終わりそう。念のため、と現在は海岸付近を見回っているところ。


「…私ね、セフィロスが神羅を離れるって言うのなら一緒に着いていくつもりなんだ」
「は?ていうか、なんで俺じゃなくてセフィロスなんだよ。ちょっと嫉妬」
「度量の狭いザックスは嫌い」
「わ、わー!それはナシ!」
「ザックスも勿論一緒が良いに決まってるでしょ。そうじゃなくて、みんなのいない神羅にこれ以上いる意味なんて、無い、から」
「そう、だよなあ…」


会話が途切れたのを見計らったかのように、十数体のモンスター。どちらがどれほど、と口にする事も無く、ただ自分の得物で切り裂いてゆく。大分疲れが溜まってきていると感じているけど、それでも考え事をしないで済むなら、その方が良い。


「そっち一体行ったぞ!」
「わかってるって!」


気付かないわけが無いの知ってるくせにと、小さく笑いながら、残りの一体を難なく切り伏せた。自分のいた位置が悪かったのか、思いっきり返り血を浴びてしまう。少し、気分が悪い。


「大丈夫か?」
「全然、怪我はしてないよ」


どうせ本社に戻って着替えればいい事だから。自分の剣に付いた血を振り落として、その場に座り込んだ。さすがにこれ以上モンスターに遭遇したくない。血が滲みて赤黒くなった地面を見つめていると、頭に何かが乗っかった。
珍しい事もあるもんだ、ザックスが少し大きめのタオルを所持してるなんて。ハンカチを持っていても驚くのに、本当に、これは珍事。女の子に気を使えるザックス?を想像してしまった私は笑いが堪えられなくて、思わず肩を震わせてしまった。ムスッとしたザックスが目の前に視線を並べてくる。


「珍しくて悪かったな!…血塗れのお前はなんか嫌だったんだ」
「そ、そう。ありがと」
「大体さ、お前だって女の子だって言うのに女らしくないよな。化粧もしてないし、あんまスカート穿かないし、…でも危なっかしいし」
「そんなことないけど」
「いーや、あるね」


こつん、とザックスと額がぶつかった。久し振りに間近で見るザックスに、不思議と肩の力が抜けた。今、ザックスの傍が世界一安心できる場所だと思える。


「何があっても、俺、お前に着いてくから」
「…本当?」
「ああ。神羅を離れる時も、ずっと着いてく」
「……ありがと」





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20090702




 


あきゅろす。
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