偶にはいいじゃない


俺と同じ世界から来た***。お互いの仲もあるから自然と一緒にバッツとジタンと行動をしている。今日もまた、クリスタルを探す……手前、イミテーション討伐と称したジタンの宝探しに付き合っていた。俺も***もSEEDだから、敵を倒すことには苦労はしない。が、***の様子がここ最近おかしい。明らかに。恋仲と言うのはあまりコスモスのメンバーにも知られていない事だが、そう、俺たちは恋仲であって、仲が悪いわけではない。それなのになんだか、余所余所しい。従って俺の胸中も穏やかではない。


「なあ、スコール。今日はここで一晩過ごす事にしたんだけど、いいか?」
「ん、ああ。構わないが」
「じゃあ俺とスコールでテント張るか。ジタンと***はメシの準備よろしくな!」
「うん。じゃあやろっか、ジタン」
「はいよ」


バッツが適当に振り分けた。異議は無いから大人しくテントを張ってゆく。ちらりと***の様子を見遣ると、楽しそうに、それはそれは楽しそうにジタンと調理をしている。元々ジタンは話し上手で、しかも女好きだから本当に…仲睦まじく。俺なんかとよりもよっぽど楽しそうだ。独占欲が強いと自覚している俺は、些細な事でも苛立つのにこれは、堪らなく辛い。でも、それを顔に出す事はしないし、言い出すこともしないし出来ない。

テントを張り終わり丁度良い場所で火を起こす。あとは食事ができあがれば終わりだ。と、言ってもちゃんとしたものではなく、簡素なものだ。こんな状況だから仕方ないが。程なくして、***とジタンがトレーに食べ物を乗せて戻ってきた。それぞれが火を囲むように座ると誰からともなく食事を始めた。


「ジタンと***が作る料理って美味いよな!俺が旅してたとき、こんな美味いの食べた事なかったぜ?」
「ちょっと味付けしたくらいなんだけどね。口に合うなら良かったよ」
「ていうか、***さ、一応レディなんだからもう少し綺麗に食えよ」
「一応って、何!」


食事中くらい静かにできないのか、とは言えなかった。一度口を開けば独占欲丸出しの発言をし兼ねない。***の口の端にソースが少し着いていた。そういえばいつもああやって着けている。俺がそれを指摘してやる位置にいたのに、今日はジタンだ。嗚呼腹立たしい。ぞの光景をジッと見ていると、バッツがその汚れに気付き、指で***の口元のソレを拭っていた。あろうことかそのソースをバッツは紙で拭き取らず、自分で舐めてしまった。こう語る俺は冷静でいられるはずが無い。視線を自分の手元に遣ると、若干震えている。


「な、何やってんの…。言ってくれれば自分でできるのに」
「やー、なんか、***が食ってる物って何でも美味そうに見えるからさあ」
「言えてる言えてる」


そう言ったジタンはちらりと此方を見た。にやにやと口元が厭らしく笑っている。俺を馬鹿にしてるのか!?
バッツは俺の想い人が***だとは知らないかもしれないが、ジタンは確実に知っている。明確に言ったつもりは無いが、そういうところはやけに鋭いヤツの事だ、勝手に気付いているのだろう。今、ここでキレるとジタンの思う壺なってしまうのだろう。抑えろ、自分、と必死に言い聞かせる事にした。
とりあえず、***をバッツからは引き離す必要がある。無意識は恐ろしい。バッツだから尚更。俺は立ち上がり***の脇まで近付く。***、と声を掛けようとした瞬間、***の体がバッツへ近付き、バッツの握っていたスプーンに口をつけるのを、俺はしっかり、はっきりと見てしまった。スプーンはバッツが使っていた物。そのスプーンに乗った飯を食べる為とは言え、間接的にキスをしたということになる。
俺はもう、我慢ならなかった。


「ッ、***!」
「…な、に…?」
「お前、何をやったのかわかってるのか!?」
「わかってるよ。ちゃんと」
「だったら何で…ッ!」


捲くし立てるように言うと、***はスッ、と立ち上がり俺を見上げた。そういえば、今日まともに目を合わせたのは初めてかもしれない。嬉しさよりもその事に切なさを覚えた。


「だって、スコール…、私が何をやっても、何も言ってくれないし、興味も示してくれない」
「そんな訳ないだろ」
「わかってるよ、スコールの事だもの。でもジタンとか皆明るいから、いつもより余計に寂しくって…」
「…***、」


ごめん、と呟くと、***は眉を下げて小さく笑った。キス、と***が他の二人には聞こえないようなボリュームで言う。さすがに唇には恥ずかしい。だから、***の額に掛かる髪を除けて軽く唇を付けた。後はまた今度だ。それでも満足してくれたのか、もう一度、今度は大きく頷いて笑った。俺もスッキリしたから、自分が元座っていた場所に戻ると、ジタンとバッツがススス…と寄ってきた。


「お熱いですねえ〜、スコールさん」
「五月蝿い、バッツ。気付いてたのか」
「当たり前だろ、俺そんな鈍くねーよ」
「そうそう、だから***にちゃんと構ってやれよ」
「……わかってる」


とりあえず、こいつ等の前では気兼ねなく好き放題やっていいらしい。焼き餅焼きの俺には本当に助かると言えない事も無い。だから、***を此方へ呼んで、一応奴等には見えないように、俺が影をつくって***の唇に俺のソレを重ねた。間接キスと言えどキスはキスだ。



偶にはいいじゃない
(あのね、スコールに嫉妬して欲しかったんだよ)


何が書きたいのかよくわからない。
20090306




 


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