最後の手段?


ブリーフィングルーム、そこで今日の任務の報告を終え帰宅しようと彼―…セフィロスを見る。なんだあの緩みきった顔は。ここには私と彼とラザードくらいしかいないからまあ、問題自体はないけど。理由は大方予想が付く。どうせ明日の事でも考えてるんだろうな。世間はセフィロスを英雄だの何だのって飾り立てているけど私にとってその称号は些か的外れなのではと思う。セフィロスは意外に恋する乙女よりも恋愛に関しては乙女になる気がする。


「おい、***。明日の…」
「ああ…。バレンタインがどうしたの?」
「ちゃんとしたチョコレートを用意してあるんだろうな」
「…あのね、前に言ったんだけど、私が料理できないって言ったでしょ?そんなにチョコが食べたいなら、私には無理だからファンの子から貰って下さい」
「嫌だ。俺はお前のを食いたい」


去年は我慢しろ、と言って買ってきたそれなりの物をプレゼントしたけどどうやら彼は手作りのものが欲しかったみたいで。こういうイベントのときに限って、私が料理できないことを忘れて強請るのだ、彼は。料理ができない事に何コンプレックス抱いてるんだ、そう言って私に告白してきたのは お 前 だ ろ う 、セフィロス!ファンと言えど、皆私と同じ目線でセフィロスを好きなんだからその子たちのチョコをセフィロスが食べる事に何も感じないと言ったら嘘だけど、こればかりはどうしようもない。いい加減、アンジールから料理習った方がいいのかもしれない…。



***



翌日。
なんだかんだ言ったけど、昨日の帰り道は緩みきった表情が消えて普通すぎるくらい普通の様子だった。やることがあるらしくてセフィロスはそのまま家に帰してくれた。ホッとすることはするものの、ちょっと驚いている。首を傾げつつも、ソルジャーのいつもお世話になっているメンバーに感謝の気持ちをと言う事で義理チョコをプレゼントしてきた。セフィロスには今年はナシになりそうだ。
朝から彼には会ってない。それはそれで少しでも淋しいと思ってしまう私はよっぽど彼のことが好きなんだなと苦笑いした。


「おい、今空いてるか」
「え、うん。どうしたの?」
「少し俺に付き合え」
「――…?」


セフィロスに引っ張られるまま着いて行くと、同じソルジャーフロアの空き部屋になっている筈の一室へと入る事になった。何をするんだろうと疑問に思っているとセフィロスの手にはどこかのブランドのロゴが入った紙袋が握られていた。まず手合わせをしたいと言うわけはないだろうし、ここトレーニングルームじゃないから。となると、何をするのか本当にわからない。


「…どうしたの」
「否、あのだな、今度互いの有休消化も兼ねて二人で旅行にでも行こうかと思うんだが、着て欲しい水着があるんだ」
「は、」
「とにかく、サイズが合っているか一度着てもらえないか?」
「わ、わかった…けど…」


手に持っていた袋の中身は水着だったらしい。何故か丁寧に手渡され、外で待っているとドアノブを捻って出て行ってしまった。武器はあるけど基本的に神羅ビルの壁は頑丈で正宗でも耐えられるような設計になっているから私の武器では到底壊して脱出なんて、無理。マテリアも今は持ってないので仕方なく服を脱いで着替える事にした。普段、こんなに露出する事はないし、するとしても腿辺りだけだから恥ずかしくて仕方が無い。セフィロスの反応が怖い。べつに見られた事が無い訳ではないけどそれとこれは別。
着替え終わり、元着ていた服を畳んでから一度深く呼吸をして、ドアを軽く叩いた。すぐにセフィロスの動く気配がした。ドキドキするんです…けど…。


「…変…じゃない?」
「ああ、俺好みだ」
「本当!?うん、とにかくよかった…」
「じゃあ次のステップだ」
「えっ…え、あ!?」


急に抱っこされた。ああもしかしたら水着を着るよりも遥かに恥ずかしいかもしれない。というか相乗効果だ。重くないかとか凄く不安になってしまう、私も女だから当たり前なのかもしれないけど。ぎゅっ、とセフィロスの肩辺りに顔を押し付けられているから何をしたいのかがわからなくて。ただどこか歩いているのは確かなんだけど。シャっとカーテンをスライドさせる音が聞こえた。え、ちょっと、何…するの…?


「そらっ」
「え、わあああ!」


急にセフィロスの手が離され受け身も取れずに何かに落ちた。痛くないし人肌くらいの温度だから熱くはない。少しとろみがある様で落とされた衝撃は緩和された。けど…この色、この香りって、ね。あのね、


「なんで、チョコ…?そしてなんで私、ここに落とされたの?」
「一晩かけて準備した。***をコーティングさせるためだ。お前が俺にチョコレートをくれないならば、お前にチョコレートになってもらおうと考えたんだ。つまり、俺はお前を食いたい」


そうですか。あれね、…昨日私の(チョコ)を食べたいって言ったセフィロスは作ってくれないと知って私を食べたいに変更したんですか。逃げたいんだけど逃げられない。大体、チョコまみれになって外に出れば嫌でも目立つし、チョコで床とか汚したくないし、水着しか着てないのは恥ずかしいし。なんと言っても目の前のセフィロスから逃げられる気がしない…し…。馬鹿みたいに冷静に考えていたらセフィロスの顔が近付き、私の口元を通り過ぎ首筋に到達した。その辺りを舐められた瞬間、思い切り反応してしまいセフィロスに喉で笑われた。貴方も折角の銀髪がチョコまみれになってしまいますよと言おうと思ったが、髪の毛はしっかり結ってあった。無性に腹が立った。恐らく浴槽にチョコを入れたと思われるここには、しっかりシャワーも付いている。いつの間にシャワールームになったのかはわからないけど、準備が良すぎることに嫌な予感しか感じなかった。


「今日は一日逃がさないからな、そのつもりでいることだ」
「……わかってますよ…」



(本気で料理を勉強しなくてはいけなくなった)


遅れましたがバレンタイン夢です。
20090215




 


あきゅろす。
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