貴方の気持ち


「もしもし…」
『***、俺だ。任務が終わったからもうすぐ本社に戻る』
「あ、はい」
『じゃあな』


はあああああああ…。電源ボタンを押し、通話を切ると一気に緊張が解け、へなへなと座り込んでしまう。地べただろうとお構いなし。この間、私の本音をセフィロスに聞かれてしまうというまさに羞恥プレイな一件以来、セフィロスからの連絡が来るのがドキドキを越して怖かった。深呼吸をしてから立ち上がり、気を取り直してデスクワークを続けることにした。が、ここで素直に作業をさせてくれないのが我らがレノ。


「おいおい、セフィロスもう戻ってくんだろ。お出迎えくらいしてやれよ、と」
「でも、仕事も放って行くのってどうなの?やることやらないんじゃ…セフィロスもよく思ってくれないわ、きっと」
「んなわけあるか。結構淋しいもんだぞ、と」
「それはレノの場合でしょ」
「いいからいいから、ツォンさんいない今の内に行くぞ!」


ぐいぐい、と腕を引っ張られては抵抗も無駄に終わり、仕方無くレノに着いて行く事にした。エレベーター内で、レノが本当の気持ちを言えと強要してくる。女友達がいないわけではないけど、それよりもレノの方が私にとっては友達以上のよき理解者だと思う。自分の友達の中には私と一緒でセフィロスのファンだっているから余計に。


「本当は…、今すぐ会いたい。ずっと一緒にいたいしできればソルジャーになりたいくらいよ。勿論、戦闘能力の関係で異動なんてさせてもらえないけど。レノにからかわれてる時間があるくらいならセフィロスのとこに行くと思うよ、きっと」
「…ひでえな。ま、でも普通はそうだと思うぞ。次は俺じゃなくってセフィロスに本音言ってやれよ、と」
「………う、…うん?」


エレベーターが一階に着いて、正面でなく裏側の出入り口に向かうと既にファンの子かわからないけど数人がうろうろしていた。うん、セフィロスのこと待ってるんだろうね。普段はこんなじゃない、でもセフィロスの事になると一歩が踏み出せないというか、臆病になってしまう。どうせ夜になったら会えるんだから署に戻っててもいいじゃないか、と口に出そうとした瞬間、レノにがっちりと腕を掴まれた。逃げるなと目が語っている。そうですか。駄目ですか。
しばらくして、コツコツと規則正しい足音が近付いてきた。私は後ろの方にいたから音しか聞こえないけれど辺りがざわざわと慌しくなってきた。セフィロスが来たみたい。いよいよ表情が強張っていく。胸の辺りでギュッと拳を握った。ふと、ギャラリーが移動しだし、セフィロスが中に入れるように通路をつくっているらしい。私は人混みに隠れるように後ろの方へと動いた。レノが馬鹿!と耳元で言う。でも、恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
俯いていると、自分の足の先の方に別な黒いものが目に入った。


「…***、」
「っあ…!セフィロス、お帰り…なさい」
「ああ。いたのなら来れば良かったものを…」
「……ご、ごめん」
「俺に会いたくなかったのか」


急に、声のトーンが低くなり、思わず顔を上げてセフィロスを見てしまった。驚いた。セフィロスでもこんな、表情をするんだ。……切ないような、胸を締め付けられるような。こういう時、何て言えばいいのだろう。彼を傷つけない言葉、失望させないような言葉。―…すると、隣にいたレノがちゃんと言え、と呟いた。でも、とセフィロスを見るとそれを望むような顔を見せた。私は、一度俯いてから口を開いた。


「…この前レノに零してた話、聞いてたんでしょう?だから恥ずかしかったのと、顔合わせにくかったのよ。本当は、ファンの皆にでさえ焼きもち焼いて…ここに来るのちょっと辛かったわ」
「そうか」
「その…嫌な子だよね」


今度は目を逸らしてしまった。嫉妬なんて、人間きっと誰でもするものだと思うけど、それでもセフィロス本人に知られたくはなかった。半分自棄になって自分は言っていたらしい。いざとなったらレノを盾にして逃げようと思う。よし、と覚悟をした刹那、ぐい、と顎を上に持ち上げられた。近付いてくるセフィロスの顔を避ける事ができず、彼からの口付けを許してしまった。見られてる恥ずかしさと、セフィロスの彼女であることの嬉しさが混じって不思議な感じ。


「悲しい顔をするな、俺は、***に正直に話してもらえて嬉しかった」
「…本当に?」
「嘘は言わん。……それと、レノ」
「なんだ?」
「あまり、***に触るな」
「わかりましたよ、と。俺は先に戻ってるからゆっくりしてこいな〜」


本人には絶対言わないけれど、意外に、意外にレノって凄いな。これからはもう少し素直にセフィロスに話してみようかな、と彼に握られた手を見て思った。



(後日、ザックスと会った***はセフィロスを頼むと念入りに言われる事になる)


CCFFでセフィロスFCに入れた時の喜びは半端なかったです。(超余談)
20090127




 


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!